村上春樹が世界を魅了し続ける理由 ベスト5

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

出版不況が叫ばれる中で、単なるベストセラーという枠を超えてまさに社会現象と言える存在となった、村上春樹の最新長編『1Q84』。単行本(全3冊)は累計約386万部を売り上げ、今年に入って全6巻が刊行された文庫版もすでに累計360万部超が発行される空前の大ヒットを記録。さらに本作は30以上の言語で翻訳出版され、その世界観に魅了された愛読者は日本のみならず世界中に広がっている。


『ダ・ヴィンチ』10月号ではそんな日本を代表する作家・村上春樹を大特集。それに際して、同誌読者と一般の村上春樹ファン844人を対象にアンケートを実施。「村上春樹が好きな理由・読む理由」を訊いた。
回答結果を以下に一部のコメントとともに紹介する。

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■1位 話(ストーリー)が面白い 43.8%
「いつの間にか自分が物語の中に入り、同時に物語が自分の心の中に入っている。僕は作品の中で生きて、作品は僕の中の何かを刺激して、起こして、動かしてくれる」(青森県・男性・会社員・39)
「入り組んでいて突拍子もないストーリーが読んでいくうちにパズルのピースがぱちんぱちんとはめ込まれるようにして、やがて世界が浮かび上がっていく」(北海道・女性・会社員・37)

■2位 有名な作家だから外せない 27.1%
「村上春樹食わず嫌いでした! 話題の『1Q84』を読んでみたら意外にエロくて人間関係の描写に惹かれました。ありえない設定なのに妙に現実味がある不思議な世界。そんなところが好き」(長野県・女性・公務員・38)
「あまりにも『ノルウェイの森』が売れていたため、ベストセラー作家なんて読まないぜ!と敬遠していたが、ふと『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んで、もっと早く読んでいれば良かった!と後悔した」(北海道・女性・会社員・43)

■3位 病みつきになるような読後感 15.3%
「一冊読むとまた次が読みたくなる。文章に触れていないと禁断症状のようになる……ので、結果的に村上作品を読み続けることになる」(京都府・女性・会社員・38)
「『ノルウェイの森』を読み終わったときに感じた喪失感は忘れられない」(東京都・女性・大学生・21)

■4位 登場人物に共感 7.4%
「“僕”の『やれやれ』という口癖が好きです。巻き込まれる出来事、他人に諦めているようなんだけど、誠実に納得するまで対処するところにも魅力を感じます」(東京都・女性・パート・51)
「主人公にいろいろなこだわりがあるところ。あれが理想的な生き方です」(宮城県・女性・会社員・36)

■その他 6.4%
「描写されるお酒が美味しそう。描写される景色に透明感がある。描写される音楽を聴きたくなる」(石川県・男性・大学生・22)
「洋服のセンスが好き」(千葉県・女性・主婦・31)
村上春樹の影響でフィッツジェラルドを読んだりドストエフスキーを読んだりするようになった」(愛知県・男性・会社員・25)など、

コメントで圧倒的に多かったのが「独特のリズムや乾いたユーモアなど、他の作家さんでは得られない、文章を読んでいるだけで感じる満足感がある」(埼玉県・女性・パート・39)、「現実と非現実の狭間のような独特の世界観」(徳島県・女性・パート・48)など、「独特~」という言葉。唯一無二の村上ワールドに、読者たちは強く惹かれているのだ。
また、ゲーム、インターネットなどのジャンルに押され、若い世代の読書離れが危惧される昨今だが、「村上春樹を愛読している」と回答した年代、男女差に偏りはなく、ほとんど均等。村上作品の若い世代に対する訴求力を示す結果となった。

文=橋富政彦
(ダ・ヴィンチ10月号「いまこそ、村上春樹」特集より)