ピース又吉がセレクト! 初心者におすすめの村上春樹作品

芸能

更新日:2017/4/13

 作家・村上春樹の大特集が巻頭を飾っている『ダ・ヴィンチ』10月号。村上春樹のインタビューや、綾野剛ら旬の役者によるトリビュートグラビアなどコンテンツがもりだくさんのなか、同誌で連載企画も担当するピースの又吉直樹も登場。おすすめの村上春樹作品を「どれから読んでいいのかわからない」ハルキ初心者や、「一度読んだけどくじけてしまった」挫折読者に向けて紹介している。

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 本に興味を持てなくても時期が悪いだけ、面白く思えるまで待てばいいという読書観を持つ又吉さん。「本読みにはデビュー作の『風の歌を聴け』ではないでしょうか」と話してくれた。
「春樹作品は敷居が高いという人もいると思うんです。僕も読む前は“モテる人の頭の良い小説で、泥のような青春を送った自分には読めへんのかな”と思ってた(笑)。でも、『風の歌~』は読み始めた途端、この軽快なリズム感はなんや! と驚きました。
 僕はどの小説も作家の伝記的背景を踏まえたいからデビュー作から読みますが、『風の歌~』の場合は70年代後半、30歳のジャズバー経営者の投稿作にしては相当“かましている”(笑)。そこも好きなんですよ」

 本読みでなければ、『ノルウェイの森』をお薦めしたいそうだ。
「会話のうまさについては『風の歌~』でも感じてたんですが、春樹さんの笑いのセンスを確信したのがこの本。僕はそれほど男前じゃない人がきれいな女性といるのを見ると、この人、話が面白いんだろうなと。主人公のワタナベもおもろいんですよ。直子に『私のおねがいをふたつ聞いてくれる?』と言われると『みっつ聞くよ』とか(笑)。会話のユーモアから作家と信頼関係を結びやすい、鉄板の物語だと思いますね」

 30代以降の挫折組に薦められるのは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。
「30代で多少ひねくれていれば骨のある作品も読みたい。それならこれ。僕は“めちゃめちゃおもろい”って、興奮しながら読んだ。ものすごい本を読んだ後って、本全体を見つめながら余韻にひたる時もあるけど、まさにそんな驚きの体験ができる作品でしたね」

 又吉さんにとって、二つの物語が同時に進むという構造を持つ小説は、本作が初めてだった。
「その後いろいろな小説を読んでこうした作品も多いと知りましたけど、大抵は二つの話の片方に肩入れしてしまうもの。『世界の終り~』は両方の話の面白さが絶妙のバランスで、それが本当に素晴らしかった」

 作家と信頼関係を築いたうえで春樹作品の真骨頂、大長編作品に入るのが、又吉流のお薦めという。
「『ねじまき鳥クロニクル』は全3巻。こんなに読むのか、ではなくて、3冊も読めてラッキー! って時期に読めば、作品の深さを最も楽しめると思います」

 この作家だからこそ取り沙汰される要素には「女性と性描写」や「おしゃれな固有名詞」もある。
「皆がいろいろ言うのもわかりますけど、僕は春樹さんの描く女性が好きで、主人公はモテていいなぁと思って読むだけ(笑)。性描写も『ノルウェイの森』でレイコさんと再会してセックスする場面は“心が叫ぶ”っていう感じがすごく好きで。春樹さんの小説の中で最も好きな女性は『ノルウェイの森』の直子です。ああいう子って、個人的に気になって仕方がない。直子にしてみたら、全然僕なんかタイプじゃなくて、”お前が私を語るな”って言うでしょうけど(笑)。ワタナベの気持ちもわかるんです。明るい緑との生活のほうが楽しいけれど、惹かれるのは直子なんですよね」

 本誌ではさらに、又吉自身のハルキ体験をエピソードをまじえ紹介。村上春樹の魅力を、本好き芸人ならでは目線で伝える内容となっている。

 

取材・文=木村俊介
ダ・ヴィンチ10月号「いまこそ、村上春樹」特集より)