「まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍」 【第18回】9月に続々発表! 新型電子書籍端末
更新日:2014/3/19
かべ :まつもとさん、まつもとさん!
まつもと :あ、はいはい。どうしました?
かべ :cakesさんを取材したりしてる間に、いつのまにか次々新しい電子書籍端末が登場して、でも日本では買えない端末もあったりして、ちょっと混乱してます。
まつもと :たしかに、いっぱいでましたね。では、今回は各社の状況を整理して、かべさんにオススメの1台は何か? というテーマでいきましょうか。
かべ :はい!
まつもと :たくさんあるので、ポイントだけ押さえつつ、さくさくいきますよ。
正常進化を遂げた? 新型Sony Reader
かべ :まず9月3日にSony Readerの新型が発表されました。9,980円と1万円を切ってきたのもびっくりしました!
まつもと :そうですね。価格もさることながら、画面書き換えの改良、FacebookやEvernoteとの連携など、実直な機能向上を図ってきた、という感じですね。
かべ :書き換え速度の向上というのは?
まつもと :電子ペーパーって、ページ送りを行うたびに書き換えの動作が生じます。そうですね・・・かべさん、「せんせい」ってオモチャで遊んだことあります?
かべ :子供が絵を描いてすぐ消せる、あれですか?
まつもと :そうです、そうです。正確には違うんですけど、まあ、まずはあれをイメージしてもらえればと。「せんせい」は磁石がついたペンを使って表面に上がってきた鉄粉が絵になります。レバーを動かすことでそれをいったん下に落して絵を消しているわけです。
かべ :キンドルとかkoboの電子ペーパーもページをめくるときに一瞬画面が白黒に点滅するように見えるのも、そういう動作をしているからなんですね。
まつもと :イメージとしてはそうですね。目に優しく、紙の本を読んでいる感覚に近いとされる電子ペーパーですが、このページ送りの際の動作に違和感を覚える人も多かったようです。これまでもその速度を改良してきたのですが、今回はその頻度が15ページに1回程度になったとされています。
かべ :パラパラとページをめくる感覚にまた近づいた、ということですね。あともう1つのポイントはFacebook、Evernote連携ですか?
まつもと :そうですね。本を読みながら、気になったフレーズや思いついたアイディアのメモが取れるのは魅力的です。パソコンでEvernoteにクリップしたWebページなどをReaderでじっくり読むこともできるようです。iPadのようなタブレット端末が得意としてきた部分を、読書専用端末にも取り入れたことを評価する声がぼくの周りでも多かったですね。また繰り返しお話ししている「ソーシャルリーディング」の面からもFacebook連携は魅力的に思えます。
かべ :端末の基本機能と、ちょっと進んだ使い方の両方が強化されたというわけですね。
まつもと :少し偉そうな言い方をするとソニーが電子書籍分野に十分やる気がある、ということを感じさせる1台ですね。あとは、書籍のラインナップが充実されれば…、というところですが、パブリッジ(出版デジタル機構)の動きもありますし、EPUBだけに対応するkoboと異なり過去の資産がある.bookやXMDF形式にも対応していますから、改善はされていくと思います。というか、されないと困ります(笑)。
国内で苦労が続くkoboも海の向こうで新型発表
かべ :次に koboも新型を6日発表しました。
まつもと :事前に予想されておらず、直後の新型kindleの発表に備えていた関係者はちょっと慌てていましたね。しかも日本での発売は未定ということで、国内メディアとしても取り上げ方が難しかったと思います。
かべ :どんなラインナップだったんでしたっけ?
まつもと :「Kobo Mini」「Kobo Glo」「Kobo Arc」の3種類ですね。Miniは5インチと電子書籍端末としてはコンパクトで気軽に持ち歩けるようになっています。Gloはフロントライトを搭載し、電子ペーパーの「暗いところでは読めない」という問題を解消。ArcはAndroid4.0を搭載した汎用端末になっています。
かべ :上から、Glo、Mini、Arcと。ほうほう……なかなか魅力的ですね。どうして日本で発売されないんでしょうか?
まつもと :いまのkobo touchの在庫が原因では、という声もありますが、僕はそれよりも日本語対応にまだ苦労している、と見ています。kobo touchの時点でも既に海外では他の機種もラインナップされていましたので。
かべ :そうか……機種が増えればそれだけ、日本語対応の手間も増えますもんね。
まつもと :そうです。そしてラインナップを充実させることにも国内ではまだ苦労されています。8月末までに6万タイトルを目指すという表示があったのを、かべさん覚えてますか?
かべ :ありました。あれってどうなったんですか?
まつもと :こうなりました。
かべ :おおっと……。8月末までに6万タイトル達成のはずが……。
まつもと :ギターコード譜や、壁紙、はてはWikipediaの著名な著者の項目を「1冊」としてカウントしているなど、引き続き調達に苦労されているなあ、というのが正直な印象です。また前回問題にしたレビューへのリンクも復活しましたが、リリース当時のものは見られない状態です。
かべ :うーん……。
まつもと :考えてみれば楽天さんは、直接消費者に対して商品やサービスを提供するのははじめてなんですよね。これまでは各テナントにユーザーとの向き合いは委ねていた。ソニーやアマゾンといったライバルの背中を見ながら、足下ではその体制作りから行わなければならない……なかなか大変な作業を続けていると言えます。