児童ポルノ法対策か新しい萌えか? 「ロリババア」の不気味な魅力

マンガ

更新日:2012/9/21

 “萌え世界”を回遊していると、それまで想像もつかなかったものに遭遇することがある。
「ロリババア」というジャンルもそのひとつ。見た目は完全にロリ系美少女なのに年齢は老婆というキャラのことなのだそう。しかも、このロリババア、70歳、80歳なんていう普通の老婆は少数派で、ほとんどが100歳以上、時には600歳といった化け物級もいるという。

 マンガやラノベには、このロリババアが多数生息している。200歳とか300歳とか、年齢だけなら老婆以上の老婆たちが制服やミニスカート、フリルのキャミソールなどを身にまとい、あどけないしぐさとキュートな笑顔をふりまいて大活躍しているのだ。
 
 たとえば、今年春に完結した『魔法先生ネギま!』(赤松 健/講談社)に登場したエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは、金髪ロングの髪型にミニスカートの制服が似合う美少女なのだが、年齢は600歳前後の吸血鬼という設定だったし、人気マンガ『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』(環 望/メディアファクトリー)で全裸同然のコスチュームを身にまとって読者を萌えさせているヒロイン、ミナ・ツェペッシュも、実は数百年生きている吸血鬼の女王という典型的なロリババアだ。

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 他にも、アニメ化された『NEEDLESS』(今井 神/集英社)では100歳のロリ体型美少女・ディスク、『月刊COMICリュウ』(徳間書店)連載中の人気マンガ『KEYMAN-THE HAND OF JUDGMENT-』(わらいなく/徳間書店)には118歳、Dr.ネクロと、ロリババアのマンガはそれこそ数えきれないほどある。

 一方、ラノベではあの超有名作品にも登場している。たとえば、『狼と香辛料』(支倉凍砂:著、文倉 十:イラスト/アスキー・メディアワークス)では、反則級の可愛さをもつ美少女ながら数百年以上生きている狼の化身・ホロがヒロインとして大活躍するし、『化物語』(西尾維新:著、VOFAN:イラスト/講談社)にも、幼い美少女・忍野忍が、“怪異殺し”とよばれる約600歳の不死の化物、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだというロリババア設定が用意されていた。

 いったいなぜ、ロリババアなんてものがここまで増殖したのか。見た目少女で年齢は老婆という設定自体は、『ハクション大魔王』のアクビちゃんや『3×3 EYES』(高田裕三/講談社)のパイなど、かなり昔から存在した。しかし、急増したのは2000年代に入ってからだ。

 理由は諸説あるが、有力なのは児童ポルノ法対策という説である。1999年に児童ポルノ法が施行され、その規制が二次元にまで及ぶと懸念したエロゲー業界が、未成年でないと言い逃れするため、ロリ系美少女キャラに100歳や300歳と言った年齢をつけるようになったというのだ。実際、2000年はじめ頃、『斬魔大聖デモンベイン』『めぐり、ひとひら。』はじめ、数多くのロリババア設定のゲームが発売されている。
 
 もっとも、規制対策として始まったといわれるこのロリババアも、途中からはまったく別の意味を持つようになった。見た目は可憐な美少女なのに老人のような言葉遣いと大物感たっぷりの尊大な態度をとる、行動は残忍な魔女や吸血鬼なのに時折、少女の可愛いしぐさが顔を出す……そんなロリとババアのギャップにツンデレ的な萌えを感じるファンが急増し、エロシーンのないマンガやラノベにも、次々とロリババアキャラが登場するようになったのである。

 そして、ロリババアは今や、それじたいが重要な萌え要素になった。『狼と香辛料』は、美少女・ホロの「わっち」「~してくりゃれ」といった老人臭たっぷりの言葉使いが大きな人気になったし、『化物語』の忍野忍も反則級の強さを持ちながら、好物がドーナツというギャップに「たまらん」との声が殺到した。エロゲー発、アニメ化もされた『機神咆吼デモンベイン』にしても、途中からはエロ要素よりヒロイン、アル・アジフのロリババアぶりが熱い支持を集めた。

 さらに最近は、ラノベ『ネフシュタニアさまの永遠じゃない日々』(旨井 某:著、久坂宗次:イラスト/創芸社)のように、ロリババア設定そのものが物語の主軸になっている作品も登場し始めている。

 日を追うごとに増殖し、一部ファンの間では「どんな美少女でも、年齢が100歳以上じゃないと萌えない」なんていう声まで聞かれるようになった「ロリババア」現象。いったいこれから先、どこまで広がり、どんなバリエーションを作り出していくのか。ちなみに、ロリババアの男子版「ショタジジイ」というのも存在しているらしい。