ハロウィン、あくび、オープンカフェ……意外な「死因」を大公開!

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更新日:2012/9/28

 添い寝、あくび、チューインガム、厚底靴、オープンカフェ、ハロウィン……。どちらかというと、平和で幸せそうなイメージのあるこれら単語の数々、いったい何をさしているかおわかりだろうか。実はこれ、すべて人が死んだ原因、つまり「死因」なのである。

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 ウソではない。今年の夏、アメリカ人の死因を膨大な資料をもとに紹介・分析した事典『図説 死因百科』(マイケル・ラルゴ/紀伊國屋書店)が日本で翻訳出版されたのだが、そこには、成人病や戦争、交通事故などとともに、意外な死の原因・理由が数多く掲載されている。

 たとえば、冒頭にあげた添い寝やチューインガム。なぜこれが死因に? と不思議に思うかもしれないが、1985年以降、大人が添い寝をして、覆い被さったり、口をふさいでしまったりした結果、圧迫死・窒息死した子どもはアメリカ国内で1557人、チューインガムをのどにつまらせて窒息死した子どもは毎年300人以上にのぼるという。

 さらに、穏やかな日常の象徴のようなオープンカフェも、同書によれば、戦場並みの危険地帯らしい。食事している最中に車が突っ込んでくる事故が頻発しており、亡くなる人が毎年250人もいるというのだ。子どもに大人気の行事・ハロウィンも同様で、1998年から2002年までのあいだに1431件の死亡事故が起こっている。

 にわかには信じがたいような死因も紹介されている。たとえば、サーカスのピエロがトランポリンから飛び降りたら、ちょうどそこにいたカバの口に入ってしまい、死亡したケース。車を運転していたら、別の車にはねとばされた牛が空からふってきて、押しつぶれてしまったケース。

 他にも、アメリカでは年間3人がワニに食われて死亡しているとか、30人がスカイダイビングで墜落死しているとか 、ミスコンの年間全参加者の2パーセントにあたる4300人が殺人や不可解な事故で新聞の死亡記事を飾っているとか、この『図説 死因百科』には、死にまつわるびっくりするようなデータが満載なのだ。

 だが、この本を読んで驚かされたのは、なんといってもマスターベーションによる死亡者が年間3761人もいるというデータだろう。セックスの最中に突然死する腹上死というのはよく聞くが、マスターベーション、オナニーで死亡って……と不思議に思って読み進めていくと、これ、どうやら“妙な道具”を使って起きた事故が多いらしい。

 1980年には年配の男性が掃除機を使ってオナニーをしていて心臓発作で亡くなっているし、近年ではドライヤーを使って感電死した“事故”が3件もあったという。さらには、ズッキーニを丸のみして死亡したなんていう、なぜ、それがオナニーになるのかよくわからないケースまで……。

 ここまできたら、もはや驚きをとおりこして唖然、呆然、そして失笑するしかないが、しかし、この事典を読んでいると、そういった個別の死因への感想とは別に、もうひとつ一貫して意識させられることがある。

 それは、私たちがいかに死と隣り合わせに生きているか、ということだ。どんなに平和で穏やかそうな場所にいても、すぐ側には必ず死への入り口が扉を開いて待っており、いつそちら側に転がり落ちても不思議はない。むしろ、生きていることのほうが奇跡に近いという事実。

 その意味では、難解な哲学書や宗教書を読むより、このヘンテコで間抜けな死因満載のB級事典を失笑しつつめくっているほうが、はるかにリアルに「生」の価値を知ることができるかもしれない。