オトナ女子のための“理想の結婚”マンガ

恋愛・結婚

更新日:2014/12/2

 穂積という新人マンガ家の『式の前日』(小学館)という短編集が大きな話題を集めている。新人の作品ながら、ツイッターなどでじわじわと評判が広まり、売り切れ店が続出している。「ふたりきり」をテーマにした6編が収められているのだが、表題作の「式の前日」はタイトル通り結婚式の前の日のことを描いた作品。

advertisement

 何度もドレスを着て、席次表やコース料理があれで大丈夫だったかと心配する女。それに対して「大丈夫だよ」と付き合ってあげる男。そんな彼らは夫婦ではなく、両親を亡くしてたった2人で過ごしてきた姉弟なのだ。2人きりで過ごす最後の日に明るく振舞おうとする姉と、いつも通りに過ごす弟。それでも何気ない会話や時間の中に、言わなくても「あぁ、これで最後なんだな」という思いがあふれている。結婚する本人ではなく、そんな彼女を1番近くで見てきた家族の視点で語られるので、彼女の結婚が本当に幸せなものに見えるのだ。
 
 女子なら誰もが憧れる結婚。若い頃は結婚するならお金持ちのエリートで、イケメンで……と相手に求める理想や要求も高かったが、そんな時代も通り過ぎ、大人になった女性たちは結婚に夢ばかりは抱けない。結婚すれば当然好きなことばかりしていられないし、自分の時間も減って我慢することは増える。結婚は、まあ、とりあえずいいやなんて思っている人もいるだろう。そんな結婚に積極的になれないオトナ女子に『式の前日』以外にもぜひ読んで欲しい作品がある。

 まず、『このたびは』(えすとえむ/祥伝社)の「ふつつかものですが」。自分のことを「顔で選んだ」という彼女に嫌な顔ひとつせず、言われるがままに結婚する旦那。自分からプロポーズもして式場も選ぶ彼女だったが、ふと「本当にこれでいいのか」と不安になる。しかし、結婚式当日に「ふつつかものですがどうぞよろしくお願いいたします」と頭を下げる彼を見て「この人が大好きだ」と気づくのだ。バリバリのキャリアウーマンや姉御肌な女性には、これくらい控えめだけど、決めるところは決めてくれる彼のような男性がお似合いなのかも。

 また『姉の結婚』(小学館)では不倫などちょっとドロドロした大人の関係を描いている西炯子だが、『娚の一生』(/小学館)の4巻では結婚したあとの幸せそうなつぐみと海江田が描かれている。窓辺で寝転がる旦那と足でじゃれあう姿はそれだけで幸せそうに映るし、つぐみは海江田が何も言わずに出かけても、それを問い詰めたりしない。そんな信頼関係には憧れる。

 さらに『くらしのいずみ』(谷川史子/少年画報社)にはジムのプールで働く奥さんと、プラネタリウムで働く旦那さんが出てくる。旦那さんは仕事で忙しい奥さんのために夕飯を作ってくれるし、奥さんは星のことなんて全然わからないけど、星の話をしているときの彼が好き。たとえ同じ趣味じゃなくても、お互いの仕事や好きなことを認めあえる関係は、まさに理想の夫婦。

 これらの作品には、たとえば向田邦子が描いたような、家族のありふれた、当たり前の日常が広がっている。毎日おめかしをしたり、旦那さんのために一方的に尽くす関係ではなく、寝癖のついた頭のまま食卓につき、旦那さんに作ってもらった朝ごはんを食べたり、寝転がる旦那と足でじゃれ合ったり。お互いに支え合いながらもうずっと一緒にいたかのように無理せず過ごせる夫婦の姿こそ、成長したオトナ女子が理想とする結婚の形なのかもしれない。こんな結婚なら、してみるのも悪くないと思えるのでは?