野村萬斎、「人間の欲望や生きることの本質を描く作品に惹かれる」

芸能

2012/10/9

  狂言師でありながらテレビドラマや舞台でも活躍中の野村萬斎氏。11月2日公開の映画『のぼうの城』では主人公の成田長親を演じている。この長親、戦国武将に求められる智も仁も勇もないが、領民たちからは“でくのぼう”を意味する“のぼう様”の愛称で呼ばれ、“人気”だけはあるという不思議な男。その彼が、侍から農民まで一致団結させ、わずか500人の兵隊で2万人もの敵に戦いを挑むというストーリーだ。

 そんな、普段のイメージからはほど遠いキャラクターを演じた野村氏は、“のぼう様”や作品の見どころについてHonya Clubのインタビューでこう語っている。
「最初に読んだときは、なぜ自分に? と思ったのが正直なところなんですけどね(笑)。わりと、シャープなイメージをもたれることが多いので。この成田長親は、でくのぼうが転じて“のぼう”と呼ばれているわけで、なんだか捉えどころのない男でね。どうにも切れ者とも思えないし。ですがだんだん、本質を見ている人なんだろうなと感じるようになってきた。ただし、この人は自分の行動に対してはあまり責任感がないんですよ。行動の結果、なにがどうなるということをまったく考えていない。“動きゃ勝手についてくるよ、ついてこなきゃ知ったこっちゃないね”という感じですね。だけど、感覚的に行動していることに嘘がないから人に好かれるんです。そして、本質を見ているから周囲にも流されないし、だからこそ水攻めにも耐えた、というところにこの作品の面白さはあると思います。
 映画での見どころは迫力満載の合戦シーン。それと個人的には田楽踊りのシーンですね。私が歌詞・振り付けを考えたのですが、2万の敵を一瞬にして引き付ける場面なので、それなら笑いやお色気なんじゃないかと監督とも話し合い、そういった要素を入れて思い切りやれたので、すごく楽しかったです。それは小説にはない部分なので、ぜひご注目ください(笑)」

 「人間の欲望や生きることの本質を描く作品に惹かれる」という野村氏。インタビューでは他にも、人生で大きく影響を受けたというお気に入りの書籍、『新訳 マクベス』『ちくま日本文学012 中島敦』を紹介。作品中の印象的なフレーズやシーンを取り上げながら、自身の思いについて熱く語っている。

取材・文=立花もも
(ダ・ヴィンチ電子ナビ「あの人のトクベツな3冊」より)