運命に翻弄される男と女――男女逆転『大奥』が再び実写に

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更新日:2012/10/11

 史実に忠実でありながら、男女逆転という大仕掛と独自の解釈で過酷な宿命を背負った男女を描いたマンガ『大奥』(よしながふみ)。2010年、嵐の二宮和也と柴咲コウの共演で実写映画化され、観客動員数約200万人の大ヒットとなった。その続編がこの秋、ドラマと映画の連結という画期的な試みで再び実写化される。

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 10月12日から放送される金曜ドラマ『大奥〜誕生―有功・家光篇―』は、3代将軍・家光の時代を描き、そしてドラマ終了後の翌週、12月22日からは5代将軍・綱吉の時代を描く『大奥〜永遠〜―右衛門佐・綱吉篇―』が公開される。これに先立ち、『ダ・ヴィンチ』11月号では、原作マンガ家・よしながふみを大特集。2010年に続き、今回のドラマ・映画でも指揮をとる金子文紀監督にインタビューを行っている。

 監督が映画第一弾の頃から言い続けてきたこと。それは『大奥』で描きたいのは、男女逆転という設定や壮大な仕掛けではなく、そこに生きる人間の心の動きだ。
「気持ちが満たされるとは、人の心が解放されるとはどういうことなのか。これが今思いつく全てに共通するテーマ。シンプルで普遍的な問いだと思います」

 ときの最高権力者・将軍。しかし、ひとたびその職に就いた女は、徳川家の血を絶やさぬために世継ぎとなる子を産むことを義務付けられる。そうした絶対的な宿命から派生する苦悩。

「男女を逆転させたことによって、現代社会にも通じるこの苦しみがより顕著になっていますよね。原作のよしながさんが、そこに光をあてて話を作っているのがすごい。有功が子を成せないことで、家光は彼と引き離されるし、何人の男と寝ても孕(はら)むことができない綱吉は生涯その呵責に苦しむ。答えを提示するようなことはできないですけれど、多部未華子さん演じる家光や、菅野美穂さん演じる綱吉を見た女性が『そうだよね』と共感できるところがあるといいなと思う。原作にもある右衛門佐のあるセリフ…堺さんが発するこの言葉を聞いて、少しでも気持ちが楽になる人がいたら嬉しいですね」

 ドラマの撮影は、まだ中盤戦。11月末まで続く。
「原作を丁寧に説明するような、観るだけで全部わかってしまうようなドラマにはしたくないんです。ドラマも、観終わったあとにそれぞれの人が“あれってこういうことなのかな”と自分で考えられるようなものにしていきたいと思っています」

取材・文=門倉紫麻
(ダ・ヴィンチ11月号特集「よしながふみ 愛がなければ…」より)