堺雅人が読みこんだ、『大奥』を演じるための4冊

芸能

2012/10/12

 2010年、二宮和也と柴咲コウの共演で話題を呼び、観客動員数約200万人の大ヒットとなった映画『大奥』。原作は、「男女逆転」という独自の発想で江戸の世と運命に翻弄された男女を描いた、よしながふみの同名コミックだ。今秋、同作の続編がテレビドラマと映画の連結で実写化される。

 10月12日から放送される金曜ドラマ『大奥~誕生―有功・家光篇―』は3代将軍・家光、12月22日からの映画『大奥~永遠~―右衛門佐・綱吉篇―』では5代将軍・綱吉の時代が描かれる。この2作をつなぐキーパーソンを演じるのが俳優・堺雅人。テレビドラマでは家光の側室となった「有功(ありこと)」を、映画では、有功を髣髴とさせる、大奥での最高権力を手に入れんとする野心家「右衛門佐(えもんのすけ)」という一人二役を演じ分ける。

 原作は出演が決定する前から読んでいたという堺は、『ダ・ヴィンチ』11月号のよしながふみ特集にてこう語る。
「はじめのうちは、男女逆転という“色もの”としての部分を強く出したほうがいいのかもしれないと思ったこともあったのですが、最終的には原作の史実としても完璧な設定を生かすために本格時代劇として演じようという結論に達して。それが正しいとかじゃなくて、そうしたほうが楽しく、いいものができると思いました」

 原作以外にも演じるにあたって読み込んだ本があるという。
1冊目は歌人としての後鳥羽院について論じた『後鳥羽院』(丸谷才一)。右衛門佐の出自・水無瀬家が後鳥羽上皇を祀っていたことを知り、手にした。
「後鳥羽が実は刀フェチだったこともわかって。映画で右衛門佐が刀を扱うシーンでは、刀フェチの後鳥羽を祀っていたなら……と手慣れたように刀を扱ってみました。自己満足ですけど(笑)」

 続いては、女の目から見た女という生き物を描いた、よしながふみの『愛すべき娘たち』。
「よしながふみ研究をしようと全作品を読んだんですが、この作品がキーになる気がしました。男と女って、あっちとこっちで分かれているわけじゃなくて、少しずつ両方の部分を持っていて、バランスを変えながら生きているんだなと」。

 意外なのは、新訳でベストセラーともなった『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)だが、「特別の愛情をわが身に呼び寄せる才能」がある三男・アリョーシャと、有功が重なると堺は言う。

 そして最後は、絶世の美男・光源氏と女たちの恋を描いた、ご存じ世界最古の小説『全訳 源氏物語』(紫式部)。「有功は光源氏的でもありますよね。源氏はあからさまな嘘をついても、ひどいことを言っても許されるので」。今回は與謝野晶子版を読んだが「吉屋信子さん訳もあるんですよね。吉屋さんは『徳川の夫人たち』も書いている人。やっぱり『源氏物語』と『大奥』はつながってるんだ! と思った」そう。

 本誌では、原作への魅力や演じるにあたっての自身の解釈などをたっぷり語った堺雅人インタビューを掲載。『大奥』のみならずよしながふみの魅力を隅々まで堪能できる特集となっている。

取材・文=門倉紫麻
(ダ・ヴィンチ11月号特集「よしながふみ 愛がなければ…」より)