『ツナグ』主演の松坂桃李「映画は自分の限界への挑戦」

芸能

2012/10/13

 『ダ・ヴィンチ』11月号の表紙を飾る俳優・松坂桃李が手にしている『空白』。『バガボンド』の1年半にわたる休載期間に行われた井上雄彦への未公開インタビューを収録した1冊だ。

「『バガボンド』は、高校生の頃からの座右の書なんですけど、役者の世界に入ってからますます共感と関心の度合いが強くなってきました。苦悩の中でも剣を捨てず、最強とは? 戦いとは? と、ひとつひとつ悟っていく武蔵の生き様に。そして、それを描く井上雄彦さんにも」

 同書では、“いかに描かれなかったか”という視点に対し、語られる言葉は、『バガボンド』という作品のみならず、創作に対する姿勢や世相への想い、人生観にまで及ぶ。
「武蔵は井上さん自身なんだな、と感じました。描けない、それでも自分はその先を描かなくてはいけないという難しいライン上で苦悩し、自我を見つめ、達観していく様が。井上さんが捉え、描き続ける武蔵の心境が、この本を読んだことで、さらに深く自分の中に入り込んできました」

 特に興味を持ったのが、『バガボンド』休載中も、連載の続けられていた『リアル』との、創作意識における対比。
「『バガボンド』は、絵的な挑戦であり、五感すべてを使うもので、『リアル』は、漫画家として培ってきたものの中から生み出すものだという。自分の中の映画とドラマのあり方に似ているかもしれないと感じました。僕にとって、ドラマは、自分のキャパシティの中で演じることで、観る方にリアリティを感じてもらうもの。そして映画は自身をどこまで伸ばせるかという、声と身体、心の、限界への挑戦なんです」

 初の単独主演作となった、辻村深月原作の映画『ツナグ』。たった一度だけ、死んでしまった人との再会を叶える仲介人“ツナグ”の歩美を演じている間は、日常との切り替えが困難なほど、命をテーマにした作品の世界に入り込んだという。それは心の限界への挑戦でもあった。
「ふとニュースから流れてくる死亡事故が、そこだけ切り取られたように耳に入ってくるんです。そして亡くなった方は、どんな想いを抱きながら逝ったのか、残された人は、今どんな気持ちでいるのかと考え込んでしまう。メンタル的にどんどん削られていってしまったある日、撮影を終えて、家に帰った時、突然、悲鳴のようなものが口を突いて出てきてしまいました。“もうムリだ!”って」

 そんな気持ちを表面張力ぎりぎりで湛えつつ、人が立ちあう生と死の現実を静かに受け止める歩美の姿がスクリーンにはある。
「親も友だちも、当たり前のようにそばにいるけれど、別れは突然やってくるかもしれないという現実に無意識になっていたんですね。一緒にいる時間のほうが、実は奇跡のように特別なもの。そこに流れている、あたたかくて小さな幸せを、この作品と関わったことで感じ、受け取れるようになったことは、僕にとって大きかった。映画を通し、この想いをたくさんの人に届けたい」

取材・文=河村道子
(ダ・ヴィンチ11月号「スタジオインタビュー」より)