よしながふみ×東村アキコのセキララ対談が実現

マンガ

更新日:2012/11/15

  『ダ・ヴィンチ』11月号で、豪華少女マンガ家対談が実現した。
この秋、男女逆転『大奥』がドラマと映画の連結で実写化されるよしながふみと、『ママはテンパリスト』『海月姫』などで知られる東村アキコ。家族ぐるみのつきあいをしているという二人が同誌にて、互いの「お父さん」談義や創作のこだわりなどについて、セキララ本音トークを展開している。

advertisement

東村: 私、『西洋骨董洋菓子店』が初めて読んだよしながさんの作品だったんです。衝撃的でした! 私と世代が変わらないと知ってショックをうけて。クオリティが全てにおいてあまりにも違う、と。「私、こういうのが描きたかったのに!」と思った。私の理想が形になっていたんです。
よしなが: いや東村さんは、こういうの描きたくないでしょう(笑)。
東村: 描けるなら描きたいですよ!
 
よしなが: 『きせかえユカちゃん』には名言がよく出てきますよね。1巻でいきなり、担任の先生が「自分のスタイルを貫き通す女ってのはモテないもんなのよ」って。こんなに短い文章で世界の真実を言ってる! と思った。
東村: 適当なんですけどね。常に朦朧としながら描いてるので。
よしなが: だからマンガっておもしろいんだって思うんです。みんなが締め切り前の極限状態でボロボロの中、ネームをきるから。そういう時に自分が本当に思ってることを描いちゃうんじゃないかな。
東村: ああ~そうですね! 私は精神の解放状態で描くから、ネームで悩むことがないんです(笑)。

よしなが: 『海月姫』、今すごくおもしろいですね。最近、ファッション業界全体の話になってきてるでしょう。どうせリアルクローズにして売るのに、なんでショーで着るドレスを作るんだ、みたいなセリフが出てきたりして。
東村: 実は私……去年、実際にアパレルブランドを立ち上げて……。
よしなが: ええっ!?
東村: 取材では、企業秘密だから原価とか教えてくれないんですよ。それで自分でやってみたんです。で、4カ月で2000万円、あっという間になくなりました。
よしなが: えええーっ!
東村: アパレル業界の知り合いに「たぶんこれ続けてたら、来年には2億ぐらい赤字が出るからやめな」って言われて早々に退散。税理士さんと両親に囲まれて、2時間説教です(笑)。めちゃめちゃ取材になったから、良かったなとは思ってますけど。
よしなが: うん、『海月姫』には真実の重みがあるもん!

東村: 『大奥』はどうやって描いてるんですか? あんな壮大な話が仕事場の机一個からできてるとはとても思えないんですけど。
よしなが: 机と山川の教科書です。
東村: 世の中の人は、ハリウッド映画みたいにブレーンがズラーッといて描いてると思ってますよ。
よしなが: いや、山川の教科書で十分なんです。私は歴史に詳しくないし、誰もが知ってる歴史上の出来事だけで描こうと。広げると、話がとっちらかっちゃうので。
東村: そこがうまいんですよ! 焦点を絞って、筋はシンプルなんだけど、深く描いていくという。
よしなが: “シットコム”的な楽さもあるのよ。外ではすごいことが起こっているかもしれないけど、大奥からお外には出ない。世界全部を描く必要がない。まあ、結局のところ、完全にはそうもいかなかったんですけど。
東村: あとどれくらいで完結しそうですか?
よしなが: いやー。やることはもう決まってるんですけど、時代劇ってページを食うんですよねえ。必ず舞台を説明してから、人間関係のことを描くから。最初は全8巻くらいでと思ってたのに……。
東村: 美内すずえ先生も『ガラスの仮面』は当初全3巻くらいの予定だったっておっしゃってたから、『大奥』もすごく長く……?
よしなが: いやいやいや……15巻くらいで勘弁してください(笑)。

取材・文=門倉紫麻
ダ・ヴィンチ11月号特集「よしながふみ 愛がなければ…」より)