読んで、つくって、食べられるコミック『きのう何食べた?』

マンガ

更新日:2012/11/22

 マンガに登場する料理を驚くべき精度で再現することで人気のブログ「マンガ食堂」。『ドラえもん』『伝染るんです。』『あしたのジョー』『3月のライオン』などなど、食べてみたかったあのマンガの料理、全49品を徹底再現した同名レシピ本も出版されている。

advertisement

 そんな人気ブログで偏愛されているコミックがよしながふみの『きのう何食べた?』。現在ブログにアップされている266本のレシピ記事のうち、およそ1割にあたる26本が同作からの再現だという(2012年9月現在)。

 同作は、料理上手な弁護士(趣味・倹約)・シロさんと、ほがらかな町の美容師・ケンジという40代のゲイカップルの日々とごはんを描く“食マンガ”だ。連載6年目を迎え、親との関係、老後の問題など、物語が深まりを見せているのも人気の理由のひとつ。『ダ・ヴィンチ』11月号では、同作ほか実写ドラマ・映画化された『大奥』『西洋骨董洋菓子店』で知られるよしながふみを徹底特集。「マンガ食堂」主宰者の梅本ゆうこさんにもインタビューを行っている。

 ――「週刊モーニング誌上ではじめて拝見して、耽美な絵柄なのにスーパーで中年男性が食材を買って料理する……というギャップが面白くて。生活を丁寧に描いた作品が好きなので、すぐに気に入ってしまったんです」

 さまざまな料理マンガを見つめ続けてきた梅本さんは、『きのう何食べた?』の特徴を“献立”にあると分析する。
「これまでの料理マンガは単品のレシピを紹介するものがほとんど。“献立”として、全体のフローを描いた作品は珍しいと思います。その点において通常のレシピ本と同等かそれ以上に“実用的”だと思います。やはり普段から料理に慣れている作家さんでないと描けない内容でしょう」

 その実用性のベースになるのが、シロさんの合理的な姿勢だ。
「水餃子はヒダを作らなくていいとか、ヒレカツに下味はいらないとか。それで十分おいしいんですよね。料理マンガって“料理は心”“手間ヒマかけるほどおいしい”的な主張が多いのですが、毎日作る側からするとしんどくなってしまう部分もあります。無理なくおいしく、を叶えてくれるところが合理的でリアルです」――(取材・文=小田真琴)

 本誌では、実際に読者が調理してみた再現レシピや、料理研究家・福田里香の寄稿も掲載。そのほかにも、よしながふみと糸井重里の対談、『大奥』の実写ドラマ&映画に出演する堺雅人のインタビューなど、よしながふみ作品を深く愉しめる充実のコンテンツとなっている。

ダ・ヴィンチ11月号特集「よしながふみ 愛がなければ…」より)