着まわしブーム! 「スタイリスト本」バカ売れの理由

暮らし

公開日:2012/10/20

 秋も深まり、冬に向けてオシャレにも気合いが入るこの季節。本の世界でも、10月6日に発売された『colors スタイリスト菊池京子 12色のファッションファイル』(菊池京子/集英社)をはじめ、数々のスタイリスト・ファッションエディターによるファッションコーディネート本が出版ラッシュ。しかも、いずれもヒットを重ねているのだ。

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 たとえば、8万部を突破した『大草直子のStyling Book』(大草直子/ワニブックス)は、元『Vingtaine(ヴァンテーヌ)』(アシェット婦人画報社)の編集者で、現在はスタイリストとして人気を集める著者が、定番アイテムを基にしたコーディネート術を披露。“バストの位置が下がり、肩が丸くまろやかになり、デコルテの贅肉がそげてくる”30代半ばから似合うようになるという白シャツから、下半身の難を隠してくれるクロップドパンツなどをピックアップし、その着まわし法を伝授している。モデルも著者が自らつとめ、巻末やコラムには私生活のスナップショットも満載。同時期に発売された『「おしゃれな人」はおしゃれになろうとする人』(大草直子/幻冬舎)も「朝食にスープはマスト。前日の夜、仕込みます」「パートナー選び。3つの“譲れないこと”だけ意識する」と、ファッションに留まらない内容だったが、こちらも仕事も家事も育児もがんばる“あこがれの女性”のライフスタイルをうかがい知ることができそうだ。

 大草直子が30~40代向けならば、絶大な信頼を誇るスタイリスト・石田純子の場合は50代がターゲット。累計20万部を記録する「大人のバイブル」シリーズ(主婦の友社)第3弾にあたる『大人の着まわしバイブル』では、シックなスカーフ柄のフレアスカートやチュニックワンピースのコーディネートがズラリ。バランスの取り方についての解説が豊富なので、年配者にとっては「美魔女への変身願望」をかなえるものとして、一方、ファッション初心者にとっても“お勉強本”としても使えそう。大草本とは対照的に、コーディネートはマネキンやトルソーで表現している点も、そうした幅広い年齢層を取り込むためのアイデアなのかもしれない。

 うって変わって、モテにも配慮した本が『おしゃれLesson 本気で可愛くなりたい人のための』(杉山ゆり/講談社)。著者は『ViVi』(講談社)や『GLAMOROUS』(講談社)で活躍するファッションエディターの杉山ゆり。モテ服として人気の白コットンレースのブラウスを、「甘い顔」「辛い顔」「高身長」「低身長」に分類してコーディネートプランを提案するなど、ファッション誌の特集さながらの構成だ。

 このほか、セレブ度高めなリアルクローズならば『大人の女の「エレガンス」磨き』(押田 比呂美/小学館)、“すてきな暮らし”系には『毎日のナチュラルおしゃれ着こなし手帖』(轟木節子/宝島社)などといったように、年齢やファッションの趣向に分かれた、これらのコーディネート本。共通点は、着まわし術にページ数が割かれていることだ。もともと着まわし術というのは、海外のファッション誌にはない日本独特の文化。バブル崩壊後より、少ない手持ちでバリエーションをもたせたいという世知辛い事情から各種ファッション誌では着まわし企画が好評を博し、いまやすっかり定着。また、ファストファッションの勃興でデザイナー主義のファッションブランドの人気が低迷し、“定番アイテムはユニクロで、流行のデザインはH&Mやフォーエバー21で”が浸透、アイテムそのものではなく組み合わせで勝負せざるをえない状況に。こうして、雑誌を超えて着まわし術は書籍でもテッパンのテーマになったといえよう。

 憧れのセレブモデルのファッションブックから、堅実なスタイリング本へ――ある意味、女性のファッション界は、保守化が進んでいるのかもしれない。