「自分大好き」人間とどう付き合うか?

人間関係

公開日:2012/10/24

 「職場で起こったいさかいを、同僚が感情的になってブログやTwitterで発信してしまい、人間関係がギクシャク状態に陥ってしまった」「部下が軽く注意しただけで極端に落ち込んでしまった」……このような“キレたら即つぶやき”“強気なようで繊細”という人、あなたのまわりにはいないだろうか。両者は異なるタイプにも見えるが、じつは同じ“自分のことしか見ていない「自分大好き」な人”なのだという。このような人がいま、増加しているというのだ。

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 そう指摘するのは、『病的に自分が好きな人』(榎本博明/幻冬舎)という本。たとえば職場なら、単純作業を「悪いけど、急ぎでやらないといけないことがあるから、これをやっておいてくれないかな」と押し付ける人や、根拠もないのに「思いつきのように夢を語る」人。思い通りにならないと投げ出し、人のせいにするのに、「落ち込んだ」「傷ついた」といってうつ病の診断を求める人。そういう人は、自己愛が過剰なのだそう。“自己愛が強い”と言われると、鏡でうっとり自分の顔を眺めるような“ナルシストさん”を思い浮かべがちだが、自分が好きすぎて“自分中心の考え方”になる人は、たしかにタチが悪いもの。

 本書では、こうした“自己愛過剰の人”が増加している理由を、ITの発達にみる。だれでも情報を発信することができるようになったせいで“自己効力感”が肥大し、さらにSNS上の「気の合う仲間だけとつき合い、異質な者は排除すればよい」といった人間関係が、「自分大好き人間を助長」しているという。もちろん、ITだけにその原因があるわけではないが、ネット上では対面でない分、相手への配慮に欠いてしまうこともあり、それを現実世界にも応用してしまう人がいるようだ。

 では、こうした「自分大好き」な人と、どのようにつき合っていけばいいのか。本書の回答は、「巻き込まれないように距離をおくということに尽きる」。みもふたもない答えだが、「ひとりひとりが自分自身の自己愛を自覚し、それを克服していくこと」でしか改善は難しいようだ。

 しかし、「自分大好き」さんにも、いいところはある。「調子のよい見方」ができる分、「挫折を乗り越えていく粘り強さを生む」こともあるからだ。この本のなかでも、かの文豪・太宰治や石川啄木、カリスマ性を発揮し、まったく新しい価値を生み出してきたスティーブ・ジョブズも、“自己愛が強すぎた人”として取り上げられているように、どうすればその人の良さを引き出せるかを考え、見極めていくことが大切なようだ。一方、自分のことを「私って自分大好き人間かも……」と思い当たる人は、ぜひ本書で自分を見つめ直し、よりよいコミュニケーションのかたちを探ってみてはいかがだろうか。