新しい萌え? いじられキャラ「ケンタウロス」の魅力

マンガ

更新日:2012/10/27

 ケンタウロスと言えば、ギリシャ神話にも登場する半人半馬の生き物。そのケンタウロスが登場するマンガが増えていることをご存知だろうか。昨年『はたらけ、ケンタウロス!』(えすとえむ/リブレ出版)、『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』(九井諒子/イースト・プレス)、『セントールの悩み』(村山 慶/徳間書店) の3冊が立て続けに出版され、さらに今年はギリシャ神話に登場するキャラクターが留学生として日本で暮らすというマンガ『ゼウスの種』(飯島浩介/講談社)も発売。また、「読め! ケンタウロス」と題した、イースト・プレス×リブレ出版×徳間書店による3社合同フェアも開催されるなど注目を集めている。

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 しかし、一体なぜケンタウロスが人気なのだろうか。その理由のひとつは“いじられキャラ”にありそう。『ゼウスの種』では、主人公のケンタウロスは現代の日本人から馬扱い。バイト先のファミレスでも指笛で呼ばれるし、お客の子供たちには背中に乗せてと言われ、店長には「ご褒美にニンジンやるから頑張れ!」なんて言われる。そして、唯一自分を人間として見てくれていると思っていた喫茶店「山嵐」で働く麻里子まで、自分のカレーだけ床に置くのだ。さらに極めつけは「グチャグチャに混ぜた方が食べやすかったですかねぇ?」なんてかわいらしく小首をかしげて尋ねてくる。悪気はないから余計につらい。

 『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』の「現代神話」にはケンタウロスの奥さんが出てくるのだが、背中の流しっこをするときに旦那さんがふざけてムツゴロウさんごっこをするとすねてしまう。

 また『はたらけ、ケンタウロス!』で登場する馬具メーカーの営業・ケンタロウは、寝坊して遅刻しそうなときは生の人参を食べながら通勤するくせに、風邪をひいた時に先輩が人参を持って看病に来ると「いまだに僕のこと馬の仲間だと思ってません?」と抗議するのだ。それに馬刺しだって平気で食べる。彼らは厳密には馬ではないので、共食いにはならないそうだ。そんな彼らへの禁句は「馬臭い」である。それほどまでに馬を意識しているのに、駆け足で目的地に行くときは「トロットでいきますから」と応える。これでは馬扱いされても仕方がないのでは?

 また、ツッコミどころ満載な“天然キャラ”なところも愛されるポイントだろう。

 『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』の「現代神話」に出てくるサラリーマンケンタウロスのタナベなんて、休日なのに「なんか暇なんで…」と会社に来るようなヤツなのだ。大学時代も毎日真面目に講義に出ており、授業が休講になったら次の時間までどうしようとおろおろしてしまうほど。のほほんとしているのに、カレー屋さんの行列に15分並ぶことさえ耐えられないほどぼーっとしている時間が苦手なのだ。普通の人になら「おいおい冗談だろ」とツッコミたくなるが、素で言っているのだから仕方がない。

 女子高生ケンタウロスの姫ちゃんが登場する『セントールの悩み』では、女の子ならではの悩みも登場するのだが、その内容と解決法にも驚きだ。男の子に告白された姫ちゃんは、あるコンプレックスを抱えていたせいでそれを断ってしまう。幼い頃に牛のアソコを見てしまった彼女は、自分のアソコもグロいんじゃないかと思い込んでいるのだ。しかし、その悩みを解決するために友達同士で見せあいっこするのだ。「断る理由ソレ!?」とか「高校生で見せあいっこって!?」と思うかもしれないが、ケンタウロスにとっては重要なことなのだろう。それに、体が大きいからたくさん食べるのは仕方がないのに、お昼は小さなお弁当で済ませてその後周りの友達に隠れてこっそりおやつを食べたりするところもいじらしい。こんなかわいらしいケンタウロスなら、キュンとくるのもうなずける。

 雄々しいルックスとは裏腹に、なぜかギャグとの相性がいいケンタウロス。馬扱いされることに傷付いたりしながらも、基本的には温和でのほほんとしている愛すべきいじられキャラなのだ。疲れて難しいことを考えず、ほっこり大笑いしたいときは、ケンタウロスマンガがおすすめかもしれない。