完全犯罪もお手のもの!? 「こんなお手伝いさんがほしい」

文芸・カルチャー

2012/10/27

 来年には映画化も決定している、東川篤哉の大ヒット小説『謎解きはディナーのあとで』(小学館)。毒舌の執事と、態度のデカいお嬢様刑事が織りなす軽妙なやりとりやユニークなトリックが人気だが、著者待望の新シリーズ『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?』(文藝春秋)は、魔法使いのお手伝いさん・マリィが活躍するユーモアミステリー。『家政婦のミタ』以降、なにかと注目されているお手伝いさん業だが、東川も以前インタビューで「(家に呼ぶなら)執事じゃなく、メイドがいいです」「荷解きをお願いしたいです」と発言。今回はそんな願望(!?)を小説内で叶えた作品なのかもしれない。

しかし、お手伝いさんが活躍する物語と聞いて、おそらく多くの人が思い浮かべるのは、見目麗しい松嶋菜々子ではなく、やはり『家政婦は見た!』の市原悦子の姿だろう。このドラマの1作目の原作は、松本清張の『熱い空気』(『事故-別冊黒い画集1』所収)。ドラマの市原同様、「他人の家庭を次々と見て回って、その家の不幸を発見するのが彼女には愉しみ」な家政婦・信子は、魔法使いのマリィも舌を巻くであろう観察眼の持ち主。しかも、彼女を酷使する家族に“完全犯罪”ともいうべき復讐を企むのだから、絶対に家に来てほしくないお手伝いさんの代表格だ。米倉涼子主演で新たにドラマ化されるらしいが、いまから恐ろしい。

一方、「家に来てほしいお手伝いさん」ナンバー1は、猫好きの心をがっちりつかんで離さない『きょうの猫村さん』(ほしよりこ/マガジンハウス)の主人公・猫村ねこだろう。スーパーの安売りをチェックし、「ネコムライス」など得意料理のレパートリーも豊富で、猫ながら懸命に働く猫村さんは、いまやお手伝いさんの鑑的存在。『家政婦は見た!』と同じように、家庭崩壊寸前のセレブ一家に奉公する猫村さんだが、もちろん信子のように故意に事故を起こしたり脅迫したりといった“黒さ”も皆無だ。家族の事情に首をつっこみ、おせっかいばかり焼くきらいはあるが、モフモフとかわいい猫ならそれもご愛嬌の範囲!?

このほか、水村美苗の『本格小説』(新潮社)で主人公が描く小説内に登場する冨美子や、中島京子の直木賞受賞作『小さいおうち』(文藝春秋)の主人公・タキからは、戦中・戦後と移ろう時代を生きた“女中”の波瀾万丈な人生が綴られている。他人なのに、家族のように近い――“お手伝いさん”という特異なポジションは、物語を生んだり、想像を広げやすい職業なのかもしれない。