「仕事も出産も」は欲張り!? ママキャリはつらいよ

暮らし

公開日:2012/10/29

 先日、世界経済フォーラムが発表した「男女格差報告書」で、男女平等度で135カ国中101位(昨年は98位)と残念な結果だった日本。おもに女性の社会進出が進んでいないことが順位に反映されたそうだが、ネット上では結果を憂う声の一方で、“社会は女性優位にできている”“育休もとれるのに贅沢すぎる”というような意見もチラホラ。昔とは違い、企業は女性に育児休暇も与えているし、復職の機会も設けているのに、これ以上何が必要なのか、あとは個人の努力ではないのか? というのだ。

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 しかし、仕事にやりがいや生きがいを見出す意欲的な女性にとって、育休制度があっても、出産が大きな決断となってしまうのが日本社会の現状。たとえば、10月9日に発売された『女子のキャリア[男社会]のしくみ、教えます』(海老原嗣生/筑摩書房)には、バリバリと仕事をしていたポジションから、出産することで「簡単で単純で短時間でできるような」働き方になってしまうことのやるせない気持ちを吐露する女性の声が紹介されている。

 バリバリ働きながら子どもを持ちたいと望む女性には、3つの選択肢があると本書には書かれている。キャリアを取るか、あるいは子どもを取るかという“どちらかをあきらめる”という2つの選択、そして「仕事も超効率的にがんばって一線に踏みとどまり、かといって家事育児もおろそかにせず、獅子奮迅の活躍をする」という“限界までがんばる”道だ。どれも極端なものだが、それが現実であるらしい。しかし、それでもなお世間には「女の幸せも得られるのだから、仕方がないこと」と捉える人も多い。それに対して著者は「男性が、キャリアも幸せな家庭もその両方を手に入れられることと比べると、やはり、問題が大きいといえませんか?」と綴る。

 それでは、働くお母さん=ママキャリは、このような環境のなかでどのように両立を図ればいいのか。この本の著者は、まず「上司たちは“こんなに配慮してるのに”と思っている」ことを指摘。無用のあつれきを避けるためにも、「感謝の意を十分に表現する」ことをすすめている。また、短時間復職で単純労働をしている際は、「ただのアシスタント」と思われないように若手には的確なアドバイスを、上司には「帰宅後に家事の合間を見て、残務を家で片付けている様子を、リアルに伝える」ことも有効だそう。周囲の人間は配慮してるつもりでも、ママキャリの立場は理解できていないもの。ときには「こちらの事情が相手にリアルに透けて見えるような状況を作る」ことも大切らしい。

 さらに、家事は手伝っても育児はほとんど参加しない夫に対しては、“アメとムチ”で「〇〇していいから、その代わり子どもの面倒を見て」と交換条件を出す。一度でも経験すれば、そのたいへんさに理解を示してもらえるだろうという作戦だ。実際、ある会社で毎週水曜を「パパの日」にし、子どもがいる男性社員を午後4時に帰宅させ、寄り道しないよう帰宅後に家から連絡をさせるという規則をつくったところ、多くの男性社員が「4時に帰ることがどんなにつらいのか」を実感させられたそう。保育園へのお迎え時間に間に合うように仕事をすばやく終えるために、日々ママキャリたちがいかにがんばっているかということだ。

 女性の労働力に期待が集まる一方で、少子化も深刻な状況にある日本。ママキャリを求めるのであれば、本書にもあるように「女性をしっかり育成し、重要する」という企業の体質改善、そして「家事・育児・介護に男性もしっかり参加する」という男性の意識改革が、まずは求められるのではないだろうか。