リリー・フランキーの下ネタはなぜ許される? モテとセクハラの境界線

暮らし

更新日:2012/10/31

 先日、『笑っていいとも!』に70万円のラブドール・リリカちゃんを連れて登場し、お茶の間を真っ昼間からドン引きさせたリリー・フランキー。会場も「ぇぇ……」と放送事故寸前なリアクションで、あのタモさんにも「どういう態度を取っていいのかわからない」と返されても、当のリリーはどこ吹く風。最初から計算していたかのように、その冷ややかなムードを楽しんでいるようにも見えた。

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 俳優業のほか、大ベストセラーとなった『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』(単行本=扶桑社、文庫=新潮社)で日本中を感涙させ、人気絵本『おでんくん』(小学館)では子どもたちからも愛される存在である一方、エッセイ集やトークでは下ネタを連発することでも有名な彼。映画『モテキ』のDVD特典映像では、「おっぱい会議」と題し、リリーが長澤まさみの演じたみゆきや、るみ子(麻生久美子)、愛(仲里依紗)といった登場人物たちのバスト論をぶったりと、もはや“リリー=エロキャラ”は周知の事実となっている。

 本来なら、50絡みのオジサンが下ネタばかり口にしていれば「キモい」「それセクハラ!」の一言で済まされそうだが、しかし、リリーはなぜか女性たちからの支持も絶大。実際、これまでも複数の人気アイドルと浮名が流れたことも。男性からすれば、「ズルい」とやっかみのひとつでもつぶやいてみたくなる。そこで、モテとセクハラの境界線を、リリーの著作の下ネタから探ってみたいと思う。

 まず、女子たちが幸せな人生を送るためにリリー先生が真理を教授した『女子の生きざま』(単行本=ぶんか社、文庫=新潮社)を開くと……冒頭から「人は外見で人を判断する」と女子がいちばん言われたくない言葉が。しかも、さくっと「世の中は諸行無常です」で済ませた後は、「アナタたちがしなければならないことは何か!? それは、まず、“キレイな靴を履くこと”です!!」と続く。そのココロは“女性の靴が汚いと、男性は女性器の匂いも臭いと思うから”。モテにつながるとは到底思えないアドバイスだが、これはOKなのだろうか……。

 さらに、『美女と野球』(河出書房新社)では、ここぞとばかりに下ネタが吹き荒れる。彼女にトイレットペーパーの使い過ぎを怒られ、指導通りに50センチで拭いたら手についてしまったという“小学生の下ネタ”から、エッセイの読者である初対面の女性に「いやー。オッパイがでかいねー!」と挨拶をかます“オジサンの下ネタ”、さらに引用も憚られるほどに女性器・男性器の名称がバシバシ登場。一体どうして、これでモテることが可能なのか、ますます謎は深まるばかりだ。

 しかし、「普段は下ネタが大の苦手」と言う、リリー・フランキーを愛読する女子(28歳・フリーター)によれば、「じつは照れ隠しの下ネタなのでは? と思わせるところがいい」と話す。たしかに、本書のなかでも「女子の嫌がることや下品なことを言うのはなんでもないクセに、電話番号を聞くように気持ちを発表するセリフは全くダメだ。これを“性的に未熟な人間”と呼ぶのだろう」と綴られている。――まわりくどく、ねちっこくエロ話を垂れ流すオヤジや、興味津々なのをひた隠しにしながらもエロ視線がバレバレな若造とは違い、“エロという仮面の下にナイーブさが透けて見える感じ”が、セクハラや下ネタNGの女子の心さえも解きほぐしてしまうのではないだろうか。

 だが、これは真性エロ男子には真似をしようにもなかなかできない芸当。「下ネタ×イケメン」の福山雅治やチュートリアル徳井義実、「下ネタ×面白」のケンドーコバヤシも同様だが、下ネタもOKなモテ男になるには、“違う努力”が必要なのかもしれない。