モデルはバカリズム? NHK広報“中の人”が明かすユルさの極意

ビジネス

更新日:2012/11/1

 「こんばんは、リア重です。リア重だから自動ツイートです。(キリッ」「まちがえました。リア充です…(>Д< ;)」――天下の公共放送の公式アカウントであるにもかかわらず、そのユルいつぶやきで人気を博しているのが、NHK広報局(NHK_PR)。長万部町のゆるキャラ・まんべくんに「MHKにしようぜ!」と提案されれば、「だが断る」と華麗に切り返し、同じくTBSの黒ブタキャラ・BooBoが「冷房きいてるとこでひとやすみ」とつぶやけば、「冷しゃぶの準備ですね。わかります。」と放送局の枠を超えてツッコむ。さらにエイプリルフールには、「本日、NHKと全ての民放が合併して国営放送になりました。今後は日本放送会社木履連盟(NHKPR)として、着物を着たアナウンサーが青い背景の前で、やや絶叫気味にニュースをお伝えする予定です。」と過激な嘘ネタをかまし、謝罪騒動にまで発展したことも。しかし、そうした話題に事欠かない強気な姿勢もウケて、現在では約50万という驚異的なフォロワー数を誇っているのだ。そんなNHK_PRが、『中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?』(NHK_PR1号/新潮社)を出版。ユルい広報アカウントが生まれた経緯や運営の裏側を明かしている。

 まず、驚かされるのは、その出生の秘密(!?)だ。NHK_PRがつぶやきはじめたのは2009年からだが、広報担当者が「ようし、やっちゃえ!」と、誰にも知らせず独断でスタートさせたらしい。最初に、アカウントの性格設定として考えたのは、“NHK+白石さん+のだめ+バカリズム”。開始1カ月は26人のフォロワーと散々な数字だったが、NHKのイメージを変えることを目的にしていたため、担当者は気にせず「普通の会話」を心がけたという。しかし、なんといってもNHKという大看板を背負ったアカウント。「(好きな食べ物は)プリンです」というだけで、「お堅いNHKが関係のないことつぶやいている!」と衝撃に変わる。その新鮮さがウケて、一気にフォロワー数を増やしていったのだ。

advertisement

 また、異色なのは、企業の広報アカウントの使命である“みんなに好かれないといけない”鉄則を捨て、「ツイートが合わない」という人にはアンフォローを勧めることを決断した点。「企業とお客様」の関係ではなく、「友達どうしのような関係になるためのツイート」を目指したい。……その思いこそが、“独自の路線”を築くことにつながったのだろう。

 そして何よりも、ここまでNHK_PRが支持されるようになったのは、“中の人”のキャラクターも大きいはずだ。民放の公式アカウントと仲良くするだけで「宣伝行為」と批判されてしまうNHK。それでも担当者は、「でもいいや。だって21世紀だもん」と割り切る。駐日フィンランド大使館のアカウントに「フィンたん!」と呼びかけて多くの人に怒られても、「フィンたん自身が喜んでくれているのだからいいじゃん」。こうした相手によって態度を変えることのほうがよくないと判断する“中の人”のツイッター倫理観が、フォロワー数にも反映されているのではないだろうか。

 10月12日に発売された『「たった1人」を確実に振り向かせると、100万人に届く。(「市場の空席」を見つけるフォーカス・マーケティング)』(阪本啓一/日本実業出版社)にもあるように、いまや広報は「広く、多く」ではなく「狭く、濃く」が主流。その見本ともいえるNHK_PRの“中の人”に学ぶべき点は多いはずだ。ちなみに、本書のタイトルにもあるように、NHK_PRは「中の人などいない」を繰り返している。その真相も本のなかで明かされているので、知りたい人はぜひ読んでみてほしい。