『のぼうの城』作者が明かす家康、謙信のマル秘エピソード

マンガ・アニメ

2012/11/6

 野村萬斎主演で現在公開中の映画『のぼうの城』。原作は、“でくのぼう”を略した「のぼう様」という愛称で親しまれた忍城の領主・成田長親を主人公に、石田三成に攻められながらも耐え抜いた戦の出来事を描いた、大人気小説だ。その作者である和田竜が、小説では書ききれなかった創作秘話や、武将にまつわるアレコレを語ったエッセイ『戦国時代の余談のよだん。』(ベストセラーズ)が10月26日に発売された。

 そもそも『のぼうの城』(小学館)を書いたきっかけは10年以上前、会社員時代の同僚から「自分の住んでいる行田市には忍城(おしじょう)という城があって、かつて石田三成やら大谷吉継やらが攻めて、水攻めなんかにもしたけれど落ちなかった城なんだ」という話を聞いたこと。それから忍城についての史実を文献でさらい、実際に忍城へも赴いた。自転車で忍城や三成が本拠地を置いた丸墓山を巡り、地図と見比べて歩き回りながら地道にかつての城の地形を把握していったそうだ。

 『のぼうの城』をはじめ、『忍びの国』(新潮社)『小太郎の左腕』(小学館)などの歴史小説を執筆してきた著者なだけあり、知識量はさすがのひとこと。本書では、戦国武将にまつわる印象やエピソードについても述べているのだが、これがおもしろいのだ。

 例えば、「神君」とも呼ばれる徳川家康のエピソード。関ヶ原の戦いのときに、家臣である本多正信が家康に“敵が遠すぎるのでもう少し旗を進めてはどうか”と進言したところ、「口ばしの黄色いくせして、余計なことを言うな」と怒ったそう。しかし、正信も負けずに「口ばしが黄色くたって、遠いものは遠いのじゃ」と聞こえよがしに叫んだというのだ。普通なら、主人にここまで楯突くのは、とても勇気のいること。殺されたっておかしくはない状況だ。しかし、家康の家臣たちは正信のように、主人に対して思ったことを何でもいい、家康もときにキレたり、大人の対応をしたりしながら家臣たちと付き合っていたらしい。こんなふうに家族のように家臣と付き合い、お互いにものを言いやすい雰囲気作りをしていた彼だからこそ、天下を取ることができたのではないかと筆者は語っている。

 また、上杉謙信の少年マンガを思わせる戦の仕方にも注目だ。敵対する北条家や今川家から塩の売買を止められてしまった武田信玄に対して、自国の塩を送ったことからもわかるように、戦を一種のスポーツのように捉え、フェアプレーを好んだ謙信。北条家の小田原城に攻めたときも、小田原城の近くで馬を寄せ、家臣と共に弁当を開いてお茶も立てながら悠々とご飯を食べ始めたというのだ。それを見た敵は一斉に鉄砲で攻撃を仕掛けるのだが、謙信は全く怯まずに顔を上げて城を見つめていたそう。

 このほか、歴史が好きな人も、そうでもない人にも楽しめる話題が盛りだくさんの本書。映画や小説の副読本として、ぜひ手に取ってみてほしい。