百人一首が武器に!? 言葉のバトルが熱い

マンガ

更新日:2012/11/8

 『ちはやふる』(末次由紀/講談社)や『超訳百人一首 うた恋い。』(杉田 圭/メディアファクトリー)の影響で、今は空前の百人一首ブーム。しかし今度は、そんな大人気の百人一首を使って戦うマンガが発売された。

 百人一首で戦うといっても、『ちはやふる』のような競技カルタのことではない。10月27日に発売された『詠う! 平安京』(真柴 真/スクウェア・エニックス) では、平安貴族たちが和歌に込めた想いで戦うのだ。

 この作品は、和歌オタクの祖母に「藤原定家」と名付けられた少年が、修学旅行先の京都から平安時代にタイムスリップしたことから始まる。突然空から降ってきた定家のことを天女だと思った歌人の在原業平と春道列樹(はるみちのつらき)は、天女をかけて最初の戦いを繰り広げるのだ。

 例えば、春道列樹が「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」という和歌を詠むと、それまで何にもなかった川に、風に運ばれてやって来た紅葉の柵ができる。それに対して、在原業平が「ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」と詠めば、川一面に紅葉が舞い、まるで染物のように真っ赤に染め上げるのだ。こんなふうに、彼らが詠んだ歌は具現化するので、真の歌人はその歌で万物を操れるという。そして、その和歌に込められた相手への思いやその強さで競い合うのだ。勝ち負けを判定する定家は、業平の詠んだ和歌から藤原高子に対する燃えるように熱い恋心を感じ取り、その和歌にさらに業平の思いを編み込んで、唐紅の川を炎で燃え上がらせるのだ。

 和歌の世界が目の前に広がるとは、かなりロマンティック。相手を攻撃するのではなく、和歌の優劣で勝敗を決めるやり方は、雅な平安貴族にとってぴったりな戦い方に思える。

 また、百人一首ではなく、諺の力で戦うラノベ『飛火夏虫―HIKAGEMUSHI―』(皆藤黒助:著、ヤッ:イラスト/集英社)が10月25日に発売されたのだが、こちらも諺の持つ意味が発現! 主人公の瀬野大介が持っている力は「飛んで火に入る夏の虫」。この諺の意味は、明かりに誘われてきた虫が火に飛び込んで死ぬことから、自ら進んで危険なことに身を投じ、災難を招くこと。大介には自ら危険な場所に飛び込むと体が燃えるという力が備わっているのだ。そのため、友達もつくらず、家族とも離れて暮らす彼だが、「袖振り合うも他生の縁」の力をもった同級生・綱刈きずなのせいで戦いに巻き込まれていく。

 彼女が持つ力は、触れられるくらい近くにいると、相手と友達になるきっかけを作り出すというものなのだが、他にも、強さにさらに強さを加える「鬼に金棒」の力を持った少年ギャングのリーダー・加賀屋は、どんな状況でも周囲にあるもので金棒を象った武器を作れる。恥ずかしがり屋の村雲照子は「穴があったら入りたい」を発動して、相手を穴に落としてしまうし、触れると余計なものを付け足してしまうのは、「蛇足」の力を持つ社木朱太郎。……こんなふうに、彼らは諺に沿った“言技”と呼ばれる能力を持っているのだ。

 言葉はときとして武器にも喩えられるものだが、実際に言葉でバトルするこれらの世界にもし自分が入り込んだら、どんな言技を使いたいか。そんなことを想像しながら読むのもオススメだ。