濃密で良好な関係を築きたい人にオススメ! 「聞いて書く」方法

人間関係

更新日:2012/11/12

  ベストセラーとなった『聞く力―心をひらく35のヒント』(阿川佐和子/文藝春秋)や、プロのライターがインタビュー術をまとめた『会話は「聞く」からはじめなさい』(上阪 徹/日本実業出版社)など、最近「聞く」という行為の重要性を訴える本をよく目にする。ちょっとした“聞くブーム”といっても過言ではないかもしれない。

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 コミュニケーション能力といえば、かつては自己PRやプレゼンテーションなど、「話す」ことがフィーチャーされがちだった。しかし、今や「聞く」が主流。自分の話ばかりしてくる人よりは、気持ちよく話をさせてくれる人の方が好印象を抱く可能性は高いだろう。「相手の話に耳を傾けることこそコミュニケーションの基本」という認識が広まりつつあるゆえんだ。

 この「聞く」に、もしも「書く」が加わったら? 人の話を聞き、それをブログなどに文章としてまとめ、読んでもらう。そうすることで、相手との関係性がより濃密で良好なものになるかもしれない……。そんな「聞いて書く」という行為の可能性を教えてくれる本が、『こんな日もあるさ 23のコラム・ノンフィクション』(上原 隆/文藝春秋)だ。

 本書は“普通の人々”の人生に焦点を当てたノンフィクションのコラム集。アラサー女子、タクシードライバー、会社をクビになったサラリーマンなど、どこにでもいるような人々にインタビューをし、それぞれの人生を1編の文章にまとめていく。著者の上原氏は、15年以上にわたるロングセラーである『友がみな我よりえらく見える日は』(上原 隆/学陽書房:単行本、幻冬舎:文庫)以来、一貫してこのスタイルで執筆を続けてきた。

 上原氏が主に焦点を当てるのは、「悔しい経験」や「つらい思い出」だ。こういったネタは取材を受ける側にとって話しにくいものだろう。ましてやそれが公表されてしまうとなると…気分を害する人も多いのではないかと想像してしまう。しかし、それが1編の文章としてまとめられると、ほとんどの人は喜んでくれるという。それは、なぜか?

 上原氏の考察によれば、他者の視点で文章化されることにより、人は自分の経験を客観視できるようになるという。また、自分の人生に「物語」が与えられることで、そこに何らかの意義を見出せるようになるという効果もあるようだ。

 人の話を「聞いて書く」という行為を通じて、相手の人柄や人生と深く向き合い、自分なりの視点でそれを鏡に映してみる。それを見た相手は、こちらの解釈を味わい、また自身の人生を客観的に見つめ直す契機にもなる。そう考えると、これは“究極の手紙”ともいえそうだ。

 まずは身近な人との絆を強めるべく、家族や恋人、友人や同僚などを対象に試してみては? 特に、疎遠になっている親子やセックスレスの夫婦なんかにオススメかも!?