恋ってこういう状態のことを言うのかも。夢を奪われた高校生男女が、青春のなかで見つけた再生の物語『カラフル』
『カラフル』(阿部暁子/集英社)
高校生の頃、すでに夢を見つけている人もいたし、夢を探している最中の人もいた。すでに夢を見つけていた人は、必死に夢を追いかけていたように思う。けれど、もし、夢を追いかけている人が、予期せず夢を奪われてしまったら…。その人は、心を閉ざして過去を忘れようとするだろうか。それとも、未来の自分に目を向けて新しい夢へと歩み出すだろうか。
作家・阿部暁子さんの新刊『カラフル』(集英社)には、夢を追いかけられなくなった少年と少女の再生と恋の物語が描かれている。
●伊澄と六花、最悪の出会い
荒谷伊澄と渡辺六花は同じ学校に通う高校1年生。初めて会ったのは、高校入学式の朝だった。伊澄が駅のホームに降りると、「泥棒」という声がする。近くに、ひったくり犯がいるようだ。それよりも驚いたのは、少し離れた前方のドアから、駅員が置いたスロープを伝って車椅子で降りてきた少女が、車椅子のタイヤについたリングを握り、泥棒に向かって勢いよく前進したことだった。その少女こそが、渡辺六花。この一件のあと、伊澄は六花が同じ高校であることを知る。六花は気の強い発言…