デビュー2年で早逝した作家・伊藤計劃の絶筆が異例の大ヒット
作家・伊藤計劃が34歳の若さでこの世を去ってから3年。その絶筆『屍者の帝国』(伊藤計劃、円城 塔/河出書房新社)がよみがえり、本格派SF小説としては異例の大ヒットとなっている。
伊藤は、2007年『虐殺器官』(早川書房)でSF界に彗星のごとくあらわれ、世界標準の大型新人として注目を集めた。08年にはゲームのノベライズ『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS』(角川グループパブリッシング)、そして傑作と誉れ高い『ハーモニー』(早川書房)を発表。しかし、残念ながら09年3月に肺がんで逝去する。20代でがんが見つかった伊藤は、作家デビューしてからも入退院を繰り返し、病室のベッドで執筆することもあったという。
その伊藤が亡くなる直前まで病床で執筆に取り組んでいたのが、この『屍者の帝国』なのだ。完成することなく残された原稿は、400字詰めの原稿用紙30枚と、2枚のA4用紙に書かれたアイデア書きのみ。それを書き継ぎ完成させたのは、芥川賞作家の円城塔だ。
伊藤と円城の出会いは、『虐殺器官』が小松左京賞の最終選考に残ったときにさか…