塩谷瞬には「まだ灰皿は飛んできてない」、蜷川幸雄の伝説
現在、舞台『トロイラスとクレシダ』が上演中の演出家・蜷川幸雄。最近は実娘である蜷川実花が監督して注目を集めているが、父もまだまだ元気。先日行われた公開舞台稽古の会見でも、二股騒動で話題を振りまいた塩谷瞬に蹴りを入れるなど、“鬼の蜷川”ぶりを見せつけた。
蜷川といえば、有名なのが「稽古中に灰皿を投げつける」という逸話だ。前出の会見では、塩谷は「まだ灰皿は飛んできてない」と語っていたが、実は、最近は投げないのだという。
その理由を明かしているのが、改訂の上、7月10日に文庫化された『演出術』(筑摩書房)である。本書によると、灰皿を投げるなどの怒りを昔のように爆発させないのは、「やってしまうと、俳優との関係を修復するのが大変」というのが理由だ。しかし、その強烈な演技指導によって演技力を磨いた役者が多いのも事実である。
たとえば、常連組のひとりである藤原竜也の場合、『近代能楽集~弱法師~』に出演した際に「かなり細かくダメ出しをしました」と本書の中で蜷川が述べている。「死と裏返しに、倒錯したエロティシズムがくっついている」という三島由紀夫の世界を描くため…