「たかが噂」とは思えなくなる、リアルな不気味さを伴ったサイコ・サスペンス『噂』/佐藤日向の#砂糖図書館⑮
皆さんは"噂"という言葉に、どんなイメージを持っているだろうか。 私は、“噂”に対してネガティブな印象しかない。 「口は災いの元」という言葉があるように、 「〜らしいよ」 「って○○から聞いたんだけど」 なんて言葉で締める話は、大体伝言ゲームと一緒で、他の誰かに伝わる時に、必ずと言って良いほど話が誇張され続け、広まっていく。 この世に「絶対に秘密なんだけどね」という言葉から始まる話ほど、怖いものはないと思う。 今回紹介するのは、噂の怖さが詰め込まれた荻原浩さんの『噂』というサイコ・サスペンスの作品だ。 「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」という都市伝説を、新作の香水ブランド「ミリエル」を売り出すために創作し、渋谷でスカウトした女子高生達をモニター兼口コミを広める役として採用するところから、物語は始まる。 その戦略通り噂は都市伝説化し、香水を身に纏う女子高生が増えるが、噂は現実となってしまう。 ラスト数ページを迎える前の少し爽やかな気持ちから一転、全てを…