ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、恩田陸『spring』
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年5月号からの転載になります。 『spring』 ●あらすじ● 「あたしはずっと春ちゃんの存在に戦慄し続けている。」その名に一万もの春を持つ、萬春。8歳でバレエを始めた彼は、15歳で海を渡り、天才バレエダンサーかつ、天…
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年5月号からの転載になります。 『spring』 ●あらすじ● 「あたしはずっと春ちゃんの存在に戦慄し続けている。」その名に一万もの春を持つ、萬春。8歳でバレエを始めた彼は、15歳で海を渡り、天才バレエダンサーかつ、天…
私がはじめて物語の人物に恋をしたのは、サン=テグジュペリ氏による『星の王子さま』を読んだ時だった。詩的な言葉を奏でる王子さまに、子ども心に強く惹かれた。だが、恩田陸氏の新著『spring』(筑摩書房)を読了後、これまで経験したことのない強い感情…
『三月は深き紅の淵を』(恩田陸/講談社文庫)に収録された「回転木馬」からはじまった、恩田陸氏による「理瀬シリーズ」。ファンの間で根強い人気を誇るシリーズの最新作『夜明けの花園』(恩田陸/講談社)が、このたび上梓された。本書には、同シリーズに…
おびただしい血が流れ、累々と死者を積み上げていくというのに、どうしてこの物語はこんなにも美しいのだろう。人は、禍々しいものに自然と引き寄せられてしまう生き物なのだろうか。冴えざえとした月の光と、まどろむ獣のような不穏な気配。この世のもので…
「密室」とは、私たちミステリー好きにとって、なんて甘美な響きをもつ言葉なのだろう。外部から切り離された閉鎖空間。そこでは、その場でしか生み出すことのできない独特な空気が醸造される。そこで育まれるのは、友情なのか、愛情なのか、それとも、憎悪…
古い建物には記憶が宿る。そこで生き、生活してきた人たちの感情が蓄積されている。もし、それを感じ取ることができたとしたら…? 『スキマワラシ』(恩田陸/集英社文庫)は、そんな特殊な力を持つ弟が、その兄とともに、不思議な少女と出くわす物語。再開発…
私にとって読書とは、人生においてのガイドブックです。尊敬する先生方が本を通して教えて下さる言葉の数々と尊い世界を、このコラムを見て下さる皆様に少しでも興味を持って頂けるきっかけになれば嬉しいです。 ②『木漏れ日に泳ぐ魚』恩田陸 ホラー映画って…
ミステリーからファンタジーまで、デビュー当時からジャンルの枠にとらわれず多種多様な作品を送り出し、2017年には『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)で直木賞と本屋大賞をW受賞。長きにわたり、人気実力共に第一線で活躍し続けてきた恩田陸。最新作である『灰の劇場…