脇役も魅力溢れる「まほろ駅前」シリーズ第3作
「まほろ駅前多田便利軒」シリーズもいよいよ3作目。『週刊文春』に連載されていた本作は連作短編ではなく、長編形式となっていますが、ストーリーの面白さとテンポの良さはまったく変わらず。そして「多田(ただ)」と「行天(ぎょうてん)」の、事件への巻き込まれ具合も。
多田と行天がお裾分けのおせち料理でわびしく冷や酒を飲んでいると、大量のなますを手土産に、以前クライアントとして助けた売春婦の「ルル」と「ハイシー」がやってきます。彼女たちは大晦日の夜に野菜を売らされている子どもを哀れに思って大量に大根を買い込んでしまったというのです。ヤマギシ会を連想させるその野菜販売組織は、かつては新興宗教団体で…と、またまたちょっとしたことから郊外都市の暗部につながってしまう展開。
その問題に対峙する過程で、行天の過去、親たちとどのような軋轢があったのかも、少々ですが明かされることになります。平行して、あの事務所に4歳の女の子、はるを預かることに。弁当とレトルトとカップ麺しか食べないふたりに、子どもの世話ができるのでしょうか? さらに、キッチンまほろの阿沙子と多田との仲は…