因果応報、輪廻転生を描く、でもちょっとグロなコミック
死んだらあの世があるのかないのか。それはやっぱり地獄と天国があって、私などはさしずめ地獄で書けない原稿を書けと鬼に折檻される締め切り地獄で死ぬほど苦悶する締め切り地獄に落とされるに違いない。もっとも締め切り地獄にはすでにどん底まで落ちている毎日なのだけれど。
死んであの世があるかどうかと悩むのはキリスト教の話である。仏教には実は地獄というのがない。
ないといえば仏教には幽霊というものもないのであって、地獄と幽霊、どちらも仏典のどこにも出てこない。成仏という言葉があるように仏となるか、輪廻転生しておぞましい生をもういっぺんというか、永劫に生まれ変わり続けるか、そのどちらかなんである。地獄や幽霊は民間信仰の概念なのである。
ただ、血の池とか針の山を説教のうちに語れば、罪業への報いがヒジョーに分かりやすい。現世での悪しき欲望をよく抑えるために考え出された効果的な方便だろう。
花輪和一はデビューの頃、残虐絵や過激なエロ表現で、「耽美派」「猟奇派」と呼ばれたが、ある時期から作風が変わった。中世を舞台に因果応報を描く、それでもやっぱりグロテスク風味だけは健在な、人間…