あなたはそれでも愛せますか? 垂れ流し猫「シロミ」と十数匹の猫たち&両親との日常を描く猫コミックエッセイ
『それでも猫は出かけていく』(ハルノ宵子/幻冬舎)
わたしたちがペットを飼いたいという欲求は一体どこから出てくるのだろうか? 寂しさを紛らわすため、あるいは何かに愛情を注ぎたいからだろうか。受けたいから? 与えたいから?
もちろんその理由は人によってさまざまだろう。
しかし、わざわざ自ら艱難辛苦を味わうために飼う、という人はそうそういないのではないだろうか。癒しの源になるはずの愛玩動物がストレスの元になってしまうのだから。
『それでも猫は出かけていく』(ハルノ宵子/幻冬舎)は、その「そうそういない」類の人である著者が、墓地で子猫を拾うところから始まるエッセイで、元は『猫びより』(辰巳出版)に8年にわたって連載していたものである。
その子猫に付けられた名前は「シロミ」。真っ白だからシロミ。まれに見る美猫で、青い瞳をピンク色の皮膚が縁取っている。左耳は軽くカールしておりそれが優雅な雰囲気を醸し出す。そして長く伸びた尻尾。しかし――その尻尾は垂れ下がったまま動かない。そしてよく見ると糞尿を垂れ流している。
その子猫は「馬尾神経症候群」という聞きなれない障害を負って…