「今日は中華って感じじゃない」と思ってしまう理由を深掘り。故・宮沢章夫の頭の中をのぞくエッセイ
『きょうはそういう感じじゃない』(宮沢章夫/河出書房新社)
人と食事のメニューを決める際に「今日は何が食べたい?」と聞かれた経験はあるでしょう。ついつい言ってしまいがちですが「何でもいい」と答えてしまうのは本末転倒です。似たような話題で、「今日は中華にしようと思うんだけど」と疑問符がつくかつかないかぐらいのニュアンスで問いかけたとき「今日は中華って感じじゃない」と言われてしまったら、罵詈雑言が口から飛び出してきてしまいかねません。
『きょうはそういう感じじゃない』(宮沢章夫/河出書房新社)は、2022年9月に逝去した劇作家で演出家、そして小説家の宮沢章夫氏によって、先述したような誰でも経験したことがありながら、深掘りされにくい感情を中心に綴った一冊です。文芸PR誌『読楽』で2014~2015年にかけて連載されていたエッセイ「オール・アバウト・ネクスト・マンス」と、雑誌『東京人』で2020年と2021年に掲載された2つの論考をとりまとめた「私的シティ・ポップ論」。そして、2016年まで刊行されていた演劇専門誌『演劇ぶっく』に2010年に掲載された1万…