【直木賞候補作―(宮内悠介)】 衝撃的な手法で描いた、ディストピアの希望と祈り

デビューから2作連続で直木賞候補入り。今ジャンル内外両方から最も注目されているSFの書き手と言っていい。今回の舞台は架空の近未来だ。 収録作はそれぞれ、人種対立が強まる南アフリカのヨハネスブルグ、ツインタワーが崩壊するニューヨーク、紛争中のアフガン、イエメン、そして東京が舞台になっている。どこも紛争、内戦、テロなどなど、人種や宗教の対立構造が膨れ上がりカタストロフも近いと思わせる不穏な状態だ。徹頭徹尾、ハードで残酷な世界。その世界で暮らす若者、あるいは兵士。展開…