何よりも力強く人生を肯定する奇跡の4コママンガ
人生の一時期、このマンガこそが私にとって救いでありました。もちろん今でもたまに読み返しますし、その度にラストシーンでは涙が止まりません。本作は今は亡き「週刊宝石」に連載されていた4コママンガでした。いかにも幸が薄い女・幸江(なんという皮肉なネーミング!)と、定職を持たないろくでなしの男・イサオ。異常なまでに尽くす幸江に、イサオが逆ギレしてちゃぶだいをひっくり返すという、使い古された夫婦漫才のようなネタを中心に、2人の日常をコミカルに描いた他愛もないマンガであったのです。
ところが登場人物の過去が描かれはじめた途端に作品の様相は一変します。キャラクターに奥行きが出て、週刊誌の穴埋め的な4コママンガは、壮大な大河ドラマへと変貌しました。子どもの頃はいじめられっ子だった幸江。同級生で唯一無二の親友だった熊本さん。野球部の人気者・前田くんへの恋。父親の犯罪。熊本さんへの裏切りと別れ、そして和解…。物語の終盤の回想シーン、中学校を卒業して東京へと旅立つ幸江を見送るべく、熊本さんは駅へと駆けつけます。息を切らせて、泣きながら手渡したのはお弁当と、そして餞別の1…