27連勤中の女性が疲れ果てて立ち寄ったコンビニの秘密とは…? 明かりに引き寄せられる人々のオムニバスドラマ
『光の箱』(衿沢世衣子/小学館)
コンビニには、どこか停滞した雰囲気が漂っている、と私は思う。そんなことを言ったら怒られるだろうか。でも、毎日目新しいものが並ぶわけでもないし(最近は野菜や肉まで買えるようになったが)、魚屋や八百屋のように積極的に声をかけてくる店員もいない。そこにあるのは、常に「日常で必要なもの」であり、それを欲する人たちをただ受け入れるだけの存在だ。
そういう、コンビニの静かで時間が止まったような空間が、衿沢世衣子氏の『光の箱』(小学館)によって摩訶不思議な世界へと軽やかに変貌する。
まずこの作品に登場するコンビニエンスストアは、普通のコンビニエンスストアではない。生と死の狭間にあるコンビニで、外は常に真っ暗。訪れる客は、人ではない常連と、生と死の狭間をさまよっている人々だ。店で働く店員も、店長とタヒニという男の2人は人ではなく(そこの説明は詳しくはされない)、コクラという青年は自転車のハンドルミスで死にかけたあと、生と死の狭間の世界で働き続ける半分人間という存在だ。
物語は、各話で登場するそれぞれの客が来店した背景から紡がれる…