“普通”という言葉の前で逡巡する人々の声が刺さる――高校1年の夏、恋に落ちたぼくと彼を巡る小さな恋の物語
“それが普通だから”。どんな会話のなかでも、たとえば心を尽くして相手に理解してもらおうと語っていても、そのひと言がこぼれると、そこで話は終わり、思考は停止してしまう。社会のなかで多様性というものに光が当たり、各々の個を認めようとする時代へと…
“それが普通だから”。どんな会話のなかでも、たとえば心を尽くして相手に理解してもらおうと語っていても、そのひと言がこぼれると、そこで話は終わり、思考は停止してしまう。社会のなかで多様性というものに光が当たり、各々の個を認めようとする時代へと…
夜空の星を眺めていると、どうしてこうも切ない気持ちになるのだろう。遥か遠くの輝きが、二度と手が届かないものを思い出させるせいだろうか。 第167回直木賞を受賞した窪美澄氏による『夜に星を放つ』(窪美澄/文藝春秋)は、そんな星空を見上げた時のよう…
『朔が満ちる』 ●あらすじ● 酒を飲むたびに暴れて家庭内暴力を振るう父に耐えかね、当時13歳だった史也は父の斧を手に襲いかかった。父に対して明確な殺意を持ち、それを実行に移してから十数年――心に傷を負ったまま家族と離れ、東京でカメラマンとして働く…
戦後、日本の殺人事件の認知件数は着実に減り続けており、2013年には初めて1000件を下回った。だがその一方で、家族内を主とした親族間での殺人件数は400件から500件台を推移しており、その割合が高まっている。この辺の事情は、石井光太氏による『近親殺人…
恋愛小説を書かせたら当代随一の女性作家・窪美澄氏の『私は女になりたい』(講談社)は、アラフィフ女性の道ならぬ恋模様を描いた作品だ。物語の展開を仄めかす書名を脳裏に焼き付けて読んでほしい。 主人公の奈美は47歳のシングルマザー。収入の少ないカメ…
本日発売の「文庫本」の内容をいち早く紹介! サイズが小さいので移動などの持ち運びにも便利で、値段も手ごろに入手できるのが文庫本の魅力。読み逃していた“人気作品”を楽しむことができる、貴重なチャンスをお見逃しなく。 《以下のレビューは単行本刊行…
もしも夫が風俗に通っている、と知ってしまったら…。『たおやかに輪をえがいて』(窪美澄/中央公論新社)は、たった1枚のポイントカードから凪のように平穏だった専業主婦の日常が変わり始める長編小説である。 主人公の絵里子は52歳。2歳上の夫と、大学2年…
「やめるときも、すこやかなるときも」――このフレーズを耳にすると、結婚式が頭に浮かぶ。晴れの場で永遠の愛を誓い合う恋人は希望に満ちていて、眩しい。だが、私たちは本当に1人の人間を支えようという覚悟を持ちながら「結婚」をしているのだろうか。窪美…