傑作コミック『水は海に向かって流れる』が待望の実写映画化! 原作者・田島列島×主演・広瀬すず対談
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年7月号からの転載になります。
2020年の弊誌「プラチナ本 OF THE YEAR」も獲得したマンガ『水は海に向かって流れる』。著者の田島列島さんは手塚治虫文化賞新生賞を獲得し、今、もっとも注目されるマンガ家の一人だ。実写映画化を記念して、改めてその魅力に迫った。
文:立花もも
最初に浮かんだのは、木立の道を二人が静かに歩く姿だった、と以前弊誌でのインタビューで原作者の田島列島さんは言った。映画『水は海に向かって流れる』もまた、二人が並んで歩く姿から始まる。高校進学を機に、叔父の住む家に身を寄せることになった直達と、傘を持って彼を迎えに来たシェアハウスの住人で26歳のOL・榊さん。雨の音は激しいが、闇夜に街灯がほのかに反射するその情景はとても、静かだ。原作とは違って、直達が叔父さんの彼女だろうかと疑う心の声は描かれない。けれど、これまで自分の日常には入り込む余地のなかった大人の女性と二人きりで歩くことの戸惑いは、少し離れて歩くその後ろ姿から伝わってくる。 そんな、冒頭の数分で、掴まれる。ああ、これは直…