女性目線の官能とは?「略奪愛」をテーマにした恋愛官能アンソロジー

『きみのために棘を生やすの』(窪 美澄、彩瀬まる、花房観音、宮木あや子、千早 茜/河出書房新社)
この数年で女性の書き手による、女性のための官能小説が、飛躍的に増えたのはご存じだろうか? リアルで共感できるストーリー展開に加えて、女性ならではの繊細な感情が丁寧に描かれている作品が、多く見られるようになった。装丁もおしゃれで、書店でも手に取りやすい。
今回は、女性向け官能小説初心者の方や、「もうすでに大好きです!」という読者、両方におススメしたい『きみのために棘を生やすの』(窪 美澄、彩瀬まる、花房観音、宮木あや子、千早 茜/河出書房新社)という恋愛官能短編集をご紹介したい。5人の女性作家が、「略奪愛」をテーマに書き下ろしたアンソロジーである。
女性の目線で官能はどのように表現され、いかに楽しむことができるのだろうか。
本書は、作家陣5人のうち3人(窪、彩瀬、宮木)が、日本の女性向け官能小説の盛り上がりの先陣を切ったとも言える新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」の受賞者である。その中でも、窪 美澄による「朧月夜のスーヴェニア」は戦時中の命懸けの恋が…