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山内マリコ

職業・肩書き
作家
ふりがな
やまうち・まりこ

プロフィール

最終更新 : 2018-06-08

1980年富山県生まれ。小説家、エッセイスト。『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『ここは退屈迎えに来て』など著書多数。FMとやま『山内マリコのオッケイトーク』にラジオパーソナリティとして出演。

受賞歴

最終更新 : 2018-06-08

2008年
『16歳はセックスの齢』第7回,女による女のためのR‐18文学賞 読者賞

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戦前のアンティーク/きもの再入門⑨|山内マリコ

戦前のアンティーク/きもの再入門⑨|山内マリコ

戦前のアンティーク  きもの収納の大半が戴き物で埋まっているわたしは、迂闊にきものや帯を買って、物を増やせない身。街できもののお店を見かけても、入りたいのはやまやまだが、入ってしまうと必ずなにか欲しくなってしまうので、そっぽを向くようにしていた。  ここでいう「きもののお店」とは、立派な呉服店ではなく、アンティークきもの屋さんのこと。きものと言ってもいろいろだが、わたしが好きなのは戦前の、いわゆるアンティークきものなのだ。    “戦前”は明治維新から第二次世界大戦での敗戦まで、七十七年もの期間を指す。とくに明治は四十五年と長いが、おそらくまだまだ江戸の名残りが強かったと思われる。  では江戸はどんなだったかというと、江戸文化に精通した漫画家、杉浦日向子の本を読んでいて、こんな言葉を見つけた。 「江戸の町は雀の羽色をしている」  江戸の色調は、くすんだ茶系だったようだ。深川江戸資料館や下町風俗資料館へ行くと「たしかに!」と膝を打つのだが、家や建具だけでなく道具や日用品まで、木材をフル活用しているので、木の色合いで統一されているのだ。し…

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収納どうしてる?/きもの再入門⑧|山内マリコ

収納どうしてる?/きもの再入門⑧|山内マリコ

収納どうしてる?  先日、きもの仲間とお喋りしていて、収納の話になった。そのとき彼女が放ったのがこの言葉。 「人に見せられないっていうきもの収納こそ見たいんですよ」  まったく同感だ。    きもの収納の正解はただ一つ。桐箪笥に、畳紙に入れて仕舞う。これである。畳紙も、つるつるした洋紙ではなく、和紙がよい。中身の見える小窓がついている畳紙は便利だけれど、糊が劣化してしまうので要注意。ときどき桐箪笥の扉や引き出しを開けて風を通すこと。  ええ、その正解は、わたしも充分、存じておるのです。  しかしそれを実行することは不可能なのだ。なにしろ洋服の収納だって常時パンパンなんだから。ではどこにどんなふうにきものを仕舞っているのか。幾度の変遷を経て現在わたしが実行中のきもの収納についてお話しいたします。ドキドキ……。    それにしてもなぜだ、なぜなんだ。人が着るものをどう仕舞っていようが勝手なのに。洋服だったらなんでもアリなのに。こときものに関しては、どう収納しているかを人に言うときに、「こんなやり方でお恥ずかしい」という羞恥と、「…

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町の呉服屋さん/きもの再入門⑦|山内マリコ

町の呉服屋さん/きもの再入門⑦|山内マリコ

町の呉服屋さん  紫織庵で注文した長襦袢が染め上がり、京都から反物が届いた。包みを開けると、目にも鮮やかな辛子色! 白生地を染めてもらうのははじめてなので、お店で見せてもらったあの純白の布に、ここまで深く、芯まで色が入ることに、単純にたまげてしまう。  地模様といっても大柄の菊はなかなかに派手だけれど、辛子色にはそれに負けない濃度があって、とても好みに仕上がっていた。辛子色、やはり好きだ……。好きな色には露骨にテンションが上がるなぁ。桜鼠の花鳥画の反物と合わせて、さっそく近所の呉服屋さんに向かった。    この町に引っ越してきてかれこれ九年。歩いて行ける、町の小さな呉服屋さんになにかと頼っている。  ショーウィンドウには季節のきものが飾られ、夏が近づくと幼児用の浴衣セットが並ぶ、庶民の店である。そりゃあきものを着る人自体が少ないので千客万来というわけではなさそうだが、ぱっと見ただけできちんと回転している店であることがわかり、なにかあったらここに頼もうと思っていたのだった。    最初は、祖母のきものを洗張(あらいばり)に出し…

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紫織庵大好き/きもの再入門⑥|山内マリコ

紫織庵大好き/きもの再入門⑥|山内マリコ

紫織庵大好き  〈紫織庵〉の名前を知ったのは、きものにドハマリしてすぐに行った、展示会の会場だった。ショップ店員さんにアテンドしてもらいながらあちこちのブースを巡っていたとき、断トツ好みの商品を扱っていて、目が釘付けになった。    紫織庵は京都の老舗呉服メーカー。大正~昭和初期の柄を復刻した浴衣を毎年発表しているので、そちらで名前を知っている人も多いかもしれない。浴衣もいいけど、わたしは長襦袢の柄に俄然、惹かれた。蔵に眠っていたデザインを掘り起こし、「大正友禅」を復元させたシリーズだそうだ。  大正時代の本絵を基に現代に復刻したという柄は、歌舞伎、浮世絵、ひよこ、ペリーの黒船、トランプ、サーカス、フランス人形、ニューヨークなど、自由そのもの。ぎょっとするような突飛なモチーフでも、不思議と品よく成立していて、とてもチャーミングなのだ。    その頃は、大枚をはたいてわざわざ長襦袢を買うような余裕はなかった。それでも、どうしても紫織庵の生地が欲しかったわたしは、紫地の「薬玉(くすだま)」の柄を選び、それを羽織りに仕立ててもらう…

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戴き物きもの/きもの再入門⑤|山内マリコ

戴き物きもの/きもの再入門⑤|山内マリコ

戴き物きもの  きものにハマり、夢中になって買い集め、思いきって手放す――というプロセスを経て手元に残った多くは、祖母と義祖母と母から譲ってもらった、戴き物のきものたちだった。年齢を問わず着られる、手仕事で作られた天然繊維の、質のいいものたち。良さはわかるし、もちろん愛着もある。  ただ、いずれも欲しくて欲しくてたまらなかったもの、というわけではない。三者三様の箪笥の中から選ばせてもらったものだ。ありがたく継承したものの、なかには「うーん微妙」と思いつつも、「マリちゃんこれ持って行きな」と外野からのプレッシャーに負けてもらったものも含まれている。  そのせいか、きもの箪笥を開けるときのテンションは、戴き物が増えれば増えるほど、静かに下がっていった。なにしろテイストが異なるきものがごっちゃになっているので、組み合わせるのはかなり難易度が高い。上質なラインナップに様変わりはしたものの、すっかりわたしの手には余るワードローブになってしまった。  母の箪笥の肥やしっぷりをあれだけ嘆いていたのに、気づけば完全に同じ轍を踏んでいた。    そんな…

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きものはきものを呼ぶ/きもの再入門➃|山内マリコ

きものはきものを呼ぶ/きもの再入門➃|山内マリコ

きものはきものを呼ぶ  たった数年で別人のように趣味が変わり、そしてポリエステルきものが残った……。  貯金を切り崩して買い集め、あれだけ夢中で愛したのに、すっかり収納スペースを圧迫する存在となってしまったポリきものたち。そのまま持っていてもよかったのだけれど、そうも言ってられなくなってきた。  きものがどんどん増えていったのだ、もう買ってないのに。    なにしろ「持って行って」の嵐なのである。長年きものを持て余していた母は、とにかくわたしに一枚でも多くきものを譲りたいらしかった。持って行けば行くほどよろこんでくれた。きものを着なくなってずいぶん経つ祖母も同様である。    というわけで、わたしのきもの箪笥は、すでに混沌のさなかにあった。二〇〇〇年代のポリエステルきものについては前回までのとおり。さらに、初回に登場した母のきもの箪笥からも、あれこれと持ち出している。昭和四十年代の、若奥様系のきものたちだ。  訪問着や付下げには食指が動かず、貰ったのはもっぱら華やかな小紋である。錦糸が織り込まれた梅文様、椿の紅型、涼やかな天…

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それは化繊か、天然か/きもの再入門③|山内マリコ

それは化繊か、天然か/きもの再入門③|山内マリコ

それは化繊か、天然か  ずっと“素材”がわからなかった。  これでも着付け教室の師範コースに通っていたとき、絹についても勉強した。座学があり、生糸を精練するときは不純物のセリシンを除去……などとノートにとってみっちり学んだのだ。しかしそれでも、わたしは依然として、絹とポリエステルの見分けがつかなかった。着付けの先生たちが、きものをちょっと触っただけで「いい結城紬ね」なんて言い当てるのを、きょとんとして見ていた。なんでわかるんだろうと首を傾げた。いくら説明されても、天然繊維と化学繊維の違いが、二十九歳のわたしには全然わからなかった。    着付け教室の師範コースで学ぶ同級生は、多くが子育てを終えた裕福な奥さまだった。現役のCAさんだったり、日本語教師をされていたり、働いている女性もいる一方で、専業主婦さんも多かった。結婚したばかりという三十代半ばくらいの、落ち着いた女性も数名いた。それぞれがそれぞれの理由で、着付けを習いに来ていた。  未婚で二十代なのはわたし一人。ポリエステルきものを堂々と着ているのも、わたし一人。師範コースは行事も多…

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いきなり散財する/きもの再入門②|山内マリコ

いきなり散財する/きもの再入門②|山内マリコ

いきなり散財する  ある日のこと、当時住んでいた吉祥寺の、駅前にあるパルコの三階あたりを例のごとく徘徊していた。その頃のわたしは小説家デビューまであと少しのところで立ち往生、仕事探さなきゃと思いつつ、外で働けば小説を書くなんて二の次になってデビューは遠のく一方というジレンマの只中にいて、なにをしていたかというと、やたら買い物していた。  金もないのに買い物依存症みたいにこまごましたものにお金を吸い取られて、自分でも資本主義の奴隷ぶりにほとほとうんざりしていた。表現欲求はあるくせに自分を発揮できる場がないものだから、ものを買うことが自己表現の代替行為になってしまうらしく、どうにもこうにも自分をコントロールできないでいた。そんな危うい精神状態で、わたしはあろうことか、呉服屋さんの店先で足を止めたのだった。そして、目にも鮮やかなターコイズブルーのきものに釘付けになった。    当時作ったきものノートに、いつなにを買ったか、写真入りで書き残されている。これを見るといかにこの頃の自分が、きものにやられていたかがよくわかる。ノートを時系列でひもと…

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