注目の新刊 『ハルモニア』 ダ・ヴィンチ2013年11月号
きみが音楽の魂ならば、ぼくは音楽の肉体だ——。スラブ系の血をひく天才美少女ナジャ。その才能を誰よりも理解し、自由を受け止める優しい青年トンボ。作曲家志望の二人の音大生と、個性豊かな友人たちの恋と音楽家としての運命を描く、芥川賞受賞第1作。
きみが音楽の魂ならば、ぼくは音楽の肉体だ——。スラブ系の血をひく天才美少女ナジャ。その才能を誰よりも理解し、自由を受け止める優しい青年トンボ。作曲家志望の二人の音大生と、個性豊かな友人たちの恋と音楽家としての運命を描く、芥川賞受賞第1作。
結婚10年目、お洒落にも外出にも興味を持たぬ妻の関心は、夫の愛情が自分にあるかどうかということのみだった。気晴らしを拒否し、悩みぬいた女の辿り着く先は――。女子大生ミカの不敵な挑戦を描いた「パーティーでシシカバブ」を併録した作品集。
奈津子は、不治である脳の病を患う夫の太一とふたり暮らし。ささやかな生活ではあるが、昔に比べればずっと良いと思えた。災厄のすべては、裕福だった昔に拘泥し、借金漬けの母と弟。でも奈津子は、一族の茨のような過去を見つめようとして……。第147回芥川賞受賞作。
『冥土めぐり』(河出書房新社)で2012年上半期の芥川賞を受賞した鹿島田真希。『文藝春秋』に掲載された選評でも、「鹿島田さんにしか描けない世界」(小川洋子)、「受賞にふさわしい一作」(堀江敏幸)、「圧倒された」(山田詠美)と賛辞の言葉が並んだ。また、三島賞、野間文芸新人賞、そしてこの芥川賞で“新人賞3冠”を達成。いま、純文学界を背負って立つ、頼もしい作家のひとりといえよう。しかし、そんな鹿島田の作品に、かなり濃厚なBLがあるのだという。
その作品は、2007年に発表され、第29回野間文芸新人賞を受賞した『ピカルディーの三度』(講談社)だ。 主人公の「おれ」は、音大受験を目指す高校2年生。受験科目のひとつである和声を学ぶために、作曲家の「先生」のもとへ通うことに……という物語なのだが、まず、2人きりのレッスン中に、先生が気になって仕方がない「おれ」の描写を見ていただいたい。
【先生の額には汗が滴っている。暑さのせいだろう。だけどおれには先生が罰を受けているように見える。生徒に和声を教えるという拷問。(中略)先生が苦しんでいる。可哀想。また、可哀想。…
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