傍観者・ビッチ・監禁被害者…BLのお約束ぶちこわす『女子BL』
『女子BL』(志村貴子ほか/リブレ出版) 僕がいて、好きな人がいて、ときどきセックスをして。BLというのは、制約の多いジャンルだ。このルールに従いつつストーリーを展開しなければならない。だがそこにさらなるルールを設けたら……。新たなBLの切り口を開いたのがアンソロジーコミック『女子BL』(リブレ出版)だ。
女子が主人公で女子の視点。すべての作品に女が絡んでくるという。だがこれは特別なシチュエーションではない。いわばBL愛好家と同じポジションである。日常生活で見かけた、戯れる男子高校生を見て萌えたり、電車で居眠りしているオッサンに妄想したり。そんな腐女子を一人、作品に登場させただけなのか? いやそれだけではない。本書では、志村貴子氏や秀良子氏、市川けい氏ほか10人の作家が工夫をこらし男同士のカップルに女子を絡ませている。
女=モブキャラの悲哀
カップルのどちらかに恋する傍観者。それがもっともなじみのある女子の登場のさせ方だろう。今までのBLのモブにさらにフォーカスした展開だ。この傍観者が、いつ・どのようにして意中の人が「男が好き」と気がつくのか。こ…