緒川たまきさんが選んだ1冊は?「読んだあと、さらに広がりを見せる景色。願わくば、新作舞台もそうでありたい」
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年10月号からの転載になります。
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、緒川たまきさん。 (取材・文=倉田モトキ 写真=干川 修)
劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA) さんと共に主宰するユニット・ケムリ研究室。その新作『眠くなっちゃった』を構想する際、甦ってきたのがコルタサルの短編集だったそうだ。 「今回の舞台はSFがテーマなんです。一口にSFといっても未来の要素だけでなく、日常から遠い世界を表現したものもある。この短編集はSFと銘打ってはいませんが、そんな世界観。読んでいると、日常と地続きながら非現実的な場所に逃避できそうな甘美さがあるんです」 特に魅了された一編が「占拠された屋敷」。自我を凌駕する怖さと美しさが頭から離れなかったという。 「屋敷を占拠していくのは、ただの“音”なんです。家の壁の向こうから物音が聞こえ、その音から逃げるように部屋や廊下を封鎖し、最後には屋敷を…