松田 凌「乙一作品から受ける生々しさは、どんな役者でも表現できないじゃないでしょうか」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、舞台『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で、主人公の一人・翔太を演じる松田凌さん。ふだんあまり小説を読むほうではないという松田さんが、強烈に心を揺さぶられ、惚れ込んでしまったという乙一の小説『暗黒童話』について話を訊いた。
事故で左目と記憶を失った女子高生が、眼球移植によって得た新たな眼の記憶をたよりに、監禁されているはずの少女を探す旅に出る。『暗黒童話』には、主軸となる物語のほかに、目のない少女のために鴉(からす)が眼球を集める童話が挿入されている。
「もしこの作品を演じることがあるなら、何より鴉をやりたいですね。……いや、違うな。演じたいというよりも、僕は鴉になりたいんだと思います。彼の目を通じて世界を見てみたい。初めて『暗黒童話』を読んだとき、本編よりもまず先に、鴉が語り、人間の心を理解して、人間のために眼球を集めるというその設定に衝撃を食らった。それですっかり鴉に惚れてしまったんです。 だけど実際に演じるとなると、ど…