松任谷由実と頭山満を結ぶ“点と線”が織りなす近現代史
『愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家』(延江浩/講談社)
不思議な本である。
『愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家』(延江浩/講談社)は、様々な歴史の断片が(そもそも歴史というのは断片の積み重ねであるが)時代を行ったり来たりしながら、歴史の表舞台で活躍した著名人や芸能人、知る人ぞ知る有名人から市井の人々までが登場し、ふと出会い、結びつき、ほぐれ、また別の人と結びつくという構成であり、明治、大正、昭和、平成を行きつ戻りつし、人の関わり合いを渡り歩くうちに、学校の授業や教科書で学んだ一直線に時間が過ぎていくような近現代史に対して、認識を新たにすることとなるのだ。
タイトルにある「愛国」は、大正から昭和にかけて活躍した国家主義者の頭山満にかかり、「ノーサイド」は稀代のミュージシャン松任谷由実にかかっている。なぜこの2人が結びつくのか? 実はこの2人は親戚なのである。松任谷由実の夫でミュージシャンの松任谷正隆の伯父の妻・尋子が頭山満の孫娘なのだ。
松任谷由実はさておき、頭山満については説明が必要だろう。
頭山満は1855年(安政2年)福岡に生まれた。187…