上白石萌音が選んだ1冊は?「大きなものをかみ砕き、真理を得る。そんな考え方の癖を自分もつけたい」
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年3月号からの転載になります。
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、上白石萌音さん。 (取材・文=河村道子 写真=booro)
「藤沢さんも“崩れ”だよね」。三宅唱監督からその言葉が零れたのは、映画『夜明けのすべて』撮影中のこと。 「“最近、何を読みました?”という私の問いに、監督はこの一冊を示し、自分ではコントロールのできない原因から苛立ちが抑えられなくなる、私の演じる藤沢さんの予測できない不安定さや脆さはこの本に著された崩れだとおっしゃって。即座に買い求め、撮影中ずっと読んでいました」 突然、山が崩れ、川が荒れる。土石流による崩壊地は日本のあちこちにある。地の内部の力をまざまざと見せつける崩れに取り憑かれた著者が、その様を見るため、各地へ出かけていく様子が綴られる随筆『崩れ』。 「台所、着物、お父様とのこと……。暮らし周りのことを数多著されてきた幸田文さんが、晩年に取り憑かれたのが、これほど大きなも…