オードリー若林正恭、第3回斎藤茂太賞受賞! 「正論が強い時代に、グレーなものをグレーなまま書いた」
若林正恭氏
その旅は、マネージャーからの「今年は夏休みが5日取れそうです」という一言から始まる。
テレビで観ない日はないのではないか、というほどに多忙を極める人気お笑い芸人、若林正恭。彼は、その言葉を聞いた瞬間、念願だったキューバ旅行を実現できるかもしれない、と期待に胸を膨らませる。
2017年に出版された『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』は、そんな彼が単身キューバを訪れた3泊5日の旅の記録である。
番組などで海外ロケに行くことは多くあるだろうが、この旅には支えてくれるマネージャーもスタッフもいない。グーグル翻訳と片言の英語を使いながら、ときに現地のガイドや知人に頼りながら、アメリカと国交を回復したキューバという国を眺めていく。
一見、終始、素朴な旅のエッセイである。マンゴージュースやロブスターに舌鼓を打ち、現地の人に葉巻の吸い方を教えてもらい、革命博物館やゲバラ邸などで歴史を辿る。しかし、その旅には彼自身が感じている鬱屈とした思いが根底に存在しており、彼は果たして何が「幸せ」なのか、答えを探ろうとする。 そんな彼の旅の記録が、第3…