世界にはまだ知らない部分がある。そう感じることで少しラクになる『夏が破れる』新庄耕インタビュー
人間の暗部を煮詰めたようなグロテスクなニュースに触れた時、「まるで新庄耕の小説みたいだ」という言葉がぽつりと浮かんだ。ネットで検索してみると、全く同じ感想をつぶやいている人と出合った。ブラック企業の営業マンを主人公にしたデビュー作『狭小邸宅』、サラリーマンがマルチにはまる様子を追いかけた『ニューカルマ』、不動産売買を餌に莫大なカネを騙し取る詐欺師たちの物語『地面師たち』……。今や「新庄耕」は、現代社会の“やばさ”を表現する、代名詞の一つになりつつあるのではないか?
(取材・文=吉田大助 撮影=山口宏之)
「まずい流れですね(笑)。その流れを変えるためにも、今回の『夏が破れる』は爽やか方面を目指すつもりだったんです」 某清涼飲料水のCMを意識した、離島で過ごす少年のひと夏の冒険ものという構想をうっすら進めていたのだという。 「その構想を編集者にしゃべりつつ、離島繋がりで、昔プータローをしていた時に離島で会って仲良くなった男の人の話をしたんですね。その男の人は島外から奥様と一緒にやってきてライフセーバーや観光ガイドをしていて、詳しい言動は伏せます…