植物の声を聴き、生命の循環を体感するSFファンタジー短編集『植物忌』がくれた気付き
『植物忌』(星野智幸/朝日新聞出版)
『植物忌』(星野智幸/朝日新聞出版)は、植物がむせ返るほどの匂いや息遣いと共に語りかけてくるSFファンタジー短編集だ。収録作の多くは植物と人間の交わりを描いており、生命の環という途方もないスケールのメッセージを受け取れる。
ファッション・タトゥーとして植物を直接肌に植える技術の発展と、人類の生物種としての進化を語った「スキン・プランツ」。疫病が蔓延した世界で部屋に引きこもる少女と青虫の交流を、絵本のような世界観で描く「ディア・プルーデンス」。植物との同化を願って植物転換手術を受けた青年の経験を追体験する「ぜんまいどおし」。植物の反乱とそれを食い止める組織ネオ・ガーデナーの抗争をスリリングに展開した「ひとがたそう」。ほか、個性豊かな全11編が収録されている。
植物はかくも大きな生命の環の中で生き続けているのだ、と圧倒される。たとえ1本の木が枯れても、別の場所に飛んだ種が芽吹けば、種の保存が続く。短編集の最初を飾る「避暑する木」は、ひとりの少年がある強い想いと共に育てた木の種を、人の手を借りながら世界へと運び、やが…