家族の愛が負の連鎖を生むこともあれば、他人に差し伸べられた手に救われることもある『真夜中のパン屋さん』完結! 大沼紀子さんインタビュー【後編】
――恋愛体質ですぐ男のもとへ走り、そして捨てられる。そんな母を目の当たりにしてきた希美が、果たして自分が恋することを受け入れられるのか、心配だったので少しホッとしました。
大沼紀子さん(以下、大沼) 普通の恋人同士にくらべると淡白ですし、どちらかというと“親友”とか“兄妹”とか“家族”に近い関係かもしれません……(笑)。それでも彼女なりに恋愛感情にふりまわされて、戸惑っているところが書けたらいいなと……。
――その様子がかわいいなと思いました(笑)。“家族”というと、本シリーズでは希美をはじめ、血縁がもたらす業や呪縛に苦しむ人たちが多く登場しますね。テーマとして、何か強い思い入れがあるんですか。
大沼 というよりも、私自身が家族というものがなんなのかよくわかっていないから、書きたがるんじゃないかと思います。愛情が諸悪の根源……って信じているわけではないんですが(笑)。ただ、デフォルトで執着するから歪むものもあるような気がしていて。親も子も、きょうだいも、みんな別の人間なのに自分と同一化して考えてしまいがちだったり、「どうしてわかってくれないの」という…