壇蜜さん「背徳的なことをして、傷つくのも得をするのも自分なら、動かないのは損」“亡き夫の遺骨”と暮らす日々を描いた『はんぶんのユウジと』
壇蜜さんの初小説『はんぶんのユウジと』(文藝春秋)は、27歳・結婚3か月にして夫が突然死してしまった「イオリ」が、「遺骨」とともに暮らす日々を描いた表題作をはじめ、亡き夫「ユウジ」の周辺を描いた連作短編集。これまでエッセイやコラムで活躍してきた壇蜜さんが、はじめて踏み込んだ創作の世界とは? 作品についてうかがいました。
■「粘土の人影」から生まれた、存在感の薄い夫
――表題作「はんぶんのユウジと」で、イオリは流されるまま見合い結婚しますが、夫のユウジが生きているときより、遺骨になってからのほうが“夫婦らしさ”を育んでいるのが印象的でした。ユウジの気配は、本人が生きているときより濃いですよね。
壇蜜 そうですね。イオリは、周囲から「哀れな女」と思われているけど、本人は全然、哀しくない。だけど、ともに生きた時間より思い出す時間のほうがこれからどんどん長くなっていくなかで、彼の存在をなかったことにはできないし、自分のなかに残った気配を消すことはできないまま生きていくんだろうなあ、というのを書きたかったので、どうしてもそういう描写になってしまいました。
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