中村蒼「過酷なシーンを演じるごとに、主人公が好きになっていきました」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、どこにでもいる大学生が、転がるかのごとくホームレス生活へと堕ちていってしまう今のリアルを描いた、映画『東京難民』で、主人公を演じた中村蒼さん。新境地の役が自身にもたらしてくれたものとは――?
「現代日本の裏をえぐる社会的なテーマは、これまで僕が係ったことのない作品の色で、修役のオファーをいただいた時“絶対に演りたい!”と思いました」
『東京難民』のクランクインはちょうど1年前。極寒の季節にスタートしたという。
「すごく寒くて、本当にキツかった。けれどその寒さが、厳しさとなって画面に出ることを、佐々部監督は考えられていたんですね。そのことを撮影が終わるまで、あえて伏せてくださっていたことにも感謝していますし、そうした緊張感ある現場に身を置けたことは役者冥利に尽きました」
「誰も現場に台本を持ってこないことがうれしかった」クランクアップ後に監督から言われた言葉も、その喜びを倍増させたという。
「キャストもスタッフも、常に準…